Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

「九相図をよむ」 第3章

2023年09月04日 20時30分30秒 | 読書

   

 「九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史」(山本聡美、角川ソフィア文庫)の第3章までを読み終わった。
 第3章は、九州国立博物館蔵の「九相図巻」(鎌倉時代)の時代考証などを中心とした読み解きである。しかし私にとっては次の箇所が印象深かった。私の興味のある視点である。しかしこの「九相図」を見ながらこのような分析はなかなかできるものではない。

この絵(第八段「噉相(たんそう)」)には、中世やまと絵の作例ではあまりみたことのない技法も多く使用されている。点描法の着色もそのひとつである。この噉相で顕著であるのだが、皮膚の色調や立体感を表現するために、朱、丹、黄土、墨、白色顔料による点描で画面を塗り上げている。絵具を混色することなく、点描の重なりによって、微妙な色調を表現しているのである。乳房の盛り上がりや皮膚が裂けた部分に点描が多く用いられている。日本の中世絵画でこのような迫真性をもって、人体を描き出した作例はほかにない。宮廷絵師に連なるであろう伝統的画技と、それを超越するかのような表現とが同居するこの不思議な様式が、鎌倉絵画史の中での本作の位置づけを難しくする。

 第四章以降、読むのが楽しみ、というと語弊もあるが、美術史的な興味は尽きない。



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