私の住む団地に萩が植わっている。毎年きれいな花を咲かせる。擁壁の天端に植わっているので、維持管理上は好ましくはないが、今のところ大きな問題とはなっていない。
今年も枝が下に向って伸び始めてきた。まもなく花芽が目立つようになるはずである。
雨の後の黒い石垣に萩の花びらが貼りついているのが美しい。また擁壁の下のL型側溝にも大量に花が落ちて目を楽しませてくれる。
★秋風のやや肌寒く吹くなべに萩の上葉の音ぞかなしき (新古今集・秋上、藤原基俊)
新古今集の時代とは違って2019年の秋は、残念ながらまだまだ涼しい風など遠い存在である。微かな気配すら感じない。
この句、叙景歌として情景を思い描いておしまいなのだろうか、とふと思った。新潮社の日本古典集成の註では降れていないが、「萩の上葉の音」がひょっとしたら衣擦れの音かもしれない。
これは男女の後朝の別れ、或いは来なくなった男を恨む歌と解することもできるのかと思った。そんな解釈は無理のかもしれない。自信はない。根拠もない。単なる思い付きとして‥。