今年の中秋の名月は10日とのこと。「名月」などの句は多数ある。まだ10日にはなっていないが、ふと思い出して秋の名月の句を3つほど。
どの句も初めて接した句である。
★空っぽの人生しかし名月です 榎戸満洲子
★仰臥する左眼に満月右眼にすこし 篠原梵
★先ず会う満月広茫の北京へ 金子兜太
第1句、月をじっと見ているとそんな気分になることもある。しかし作者は自分の人生を「空っぽ」と認識しているわけではないと思う。自分の人生について問われれば、自足、満足していると応える人の句と思う。月の光を浴びて、自分の人生など大したことない、との感慨が浮かぶ人は充実した人であると思う。反省し、自分を省みることの出来るのだから。
第2句、歳を撮って視力が若い時のようには働かない。老眼はもとより乱視、斜視、白内障、緑内障‥。そして私のように両の眼がひとつに像を結ばなくなる場合も‥。力を抜いて月を見る、そして老いをさらに実感する。それでも月を眺めるという心のゆとりが欲しいものである。
第3句、異国の地で夜に明るい満月に出くわす。東京なと、高層ビルが林立し、ビルの明かりで満月が霞むことのなかった北京での驚きの出会いなのであろう。「広茫」と広さが押し寄せてくる。