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伊東良徳の超乱読読書日記

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いまファンタジーにできること

2022-03-30 22:05:05 | エッセイ
 日本では「ゲド戦記」という邦題を付されて出版された EARTHSEA シリーズ等の作者がファンタジーについて行った講演、評論等をまとめた本。
 動物が登場する児童文学/ファンタジーについての評論「子どもの本の動物たち」が全体の半分近くを占め、そこでは多数の作品が取り上げられ紹介されています。
 他方で、裏表紙の紹介で「指輪物語、ピーターラビット、ドリトル先生物語、ゲド戦記から、ハリー・ポッターまで。ファンタジーや児童文学を読み解きながらその本質を明らかに」とされているのは、かなりミスリーディングというか、出版サイドの売らんかなの羊頭狗肉で、このうたい文句に惹かれて読むと失望すると思います。ドリトル先生物語は動物の本ですので「子どもの本の動物たち」の中で他の動物作品と同レベルで触れられており、「ゲド戦記」は「YA文学のヤングアダルト」で説明されていますが、指輪物語とピーターラビットは何度か登場はするものの内容の説明はなく(説明するまでもないということでしょう)、ハリー・ポッターについては、独創的で前例がないと激賞する評論家がいることについて「はっきり言えば紋切り型で、模倣的でさえある作品」を独創的な業績だと思い込むとはなんて無知で素養のないことかと嘆くのみ(51~52ページ)です。
 ル=グウィンらしいプライドとシニカルな筆致、白人を主人公とすることへの疑問と EARTHSEA 3部作の後の17年で得たフェミニズムの視点(3部作のときには「ジェンダーについて問いただす用意ができて」いなかったこと、17年のうちにフェミニズムの第2波が打ち寄せ、そこから学んだことを、ル=グウィン自身が「YA文学のヤングアダルト」で語っています)が全体に満ちていて、それらを楽しめる読者には読み味がいいエッセイ集だと思います。


アーシュラ・K・ル=グウィン 訳:谷垣暁美
河出文庫 2022年2月20日発行(単行本は2011年8月、原書は2009年)
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