イギリス南端の街ブライトンの元公営住宅地に住む福岡県出身のライターの著者が、アイルランド人の夫との間に生まれた中学生の息子のスクールライフや地域のできごとを題材に、イギリス社会、特に底辺地域の住人たちの様子、レイシズムなどをレポートし、Yahoo!ニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞を受賞した本の続編。
元公営住宅地の図書館が廃止された跡地にホームレス受け入れ施設が計画され、それに対して地元住民から反対意見が噴出して計画が頓挫する様子など、イギリス社会と地域の変化と人間関係の変化、他のさまざまな事情も含めて移ろいゆく人間関係の中で子どもたちも翻弄されながら成長していく様子などが読み取れます。そういった点、前作同様に、子どもの応答と、その成長に、共感します。
貧困世帯の子どものために制服リサイクルを企画運営していたミセス・パープルが、そこから女子生徒に生理用品を配る運動へとシフトしていったことに関連して述べている次のパラグラフに、私は感じ入りました。「社会活動に熱心な教員たちにも、それぞれの持ち場があるというか、みんな考え方も、優先順位も違うんだなという当たり前のことに気づいた。誰のやっていることが正しいとか、誰の活動のほうが重要というわけでもない。互いを少し批判したり、疑問視したりしながらでも、それぞれの持ち場でやっていく。これもまた多様性なのだろう。いろいろと違う考え方を持ち、いろいろ違う活動をしている先生たちがいるからこそ、それぞれ違う個性や問題を抱えた子どもたちに対応できる。多様性のある場所は揉めるし、分断も起こるが、それがある現場には補強し合って回っていく強さがある」(57ページ)。後半は教師の仕事に絡めていますが、職業に関係なく、生き方/生き様の問題として噛みしめておきたいと思います。

ブレイディみかこ 新潮社 2021年9月15日発行
元公営住宅地の図書館が廃止された跡地にホームレス受け入れ施設が計画され、それに対して地元住民から反対意見が噴出して計画が頓挫する様子など、イギリス社会と地域の変化と人間関係の変化、他のさまざまな事情も含めて移ろいゆく人間関係の中で子どもたちも翻弄されながら成長していく様子などが読み取れます。そういった点、前作同様に、子どもの応答と、その成長に、共感します。
貧困世帯の子どものために制服リサイクルを企画運営していたミセス・パープルが、そこから女子生徒に生理用品を配る運動へとシフトしていったことに関連して述べている次のパラグラフに、私は感じ入りました。「社会活動に熱心な教員たちにも、それぞれの持ち場があるというか、みんな考え方も、優先順位も違うんだなという当たり前のことに気づいた。誰のやっていることが正しいとか、誰の活動のほうが重要というわけでもない。互いを少し批判したり、疑問視したりしながらでも、それぞれの持ち場でやっていく。これもまた多様性なのだろう。いろいろと違う考え方を持ち、いろいろ違う活動をしている先生たちがいるからこそ、それぞれ違う個性や問題を抱えた子どもたちに対応できる。多様性のある場所は揉めるし、分断も起こるが、それがある現場には補強し合って回っていく強さがある」(57ページ)。後半は教師の仕事に絡めていますが、職業に関係なく、生き方/生き様の問題として噛みしめておきたいと思います。

ブレイディみかこ 新潮社 2021年9月15日発行