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伊東良徳の超乱読読書日記

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電子証拠の理論と実務[第2版] 収集・保全・立証

2022-03-08 23:25:54 | 実用書・ビジネス書
 裁判での電子証拠の取扱について、理論(学説)的な側面、アメリカ・ドイツ・フランスの立法例と裁判例、日本での裁判実務等に基づいて解説した本。
 デジタル・フォレンジック(デジタル・データ(「電磁的記録」)の保全・解析、改ざんの分析等)に関しては、たぶんこの本の想定読者層の弁護士等法律実務関係者が読んでもわからないであろう技術的解説がなされ(でも、それを弁護士が書いていたりする (@_@))、わからないままに、でも重要な技術・手法と認識することが求められている感じがします。むしろ現実の事件でありがちな事例・パターンを挙げながらこういうときにはこういう方法で何が発見・分析できてそのための時間とコストはこれくらいと説明してくれた方が、弁護士には便利だと思います。技術力もコストも業者によってさまざまなので書けないということかとは思いますが。
 「電子証拠の原本の取調」に関する記述では、電子証拠の改ざんの容易さとそれを見抜くことの困難さが強調された上で、改ざんを見抜く方法の例が解説されていますし、TeamsによるWeb会議で、証拠提出者に対してオンラインで提出データを格納していたパソコン等にある電子証拠の原本やメタデータ等を裁判官に確認させるべきとして、さらに裁判官がどのようなデータを確認すべきかをも解説しています(154~173ページ)。この部分を読むと、電子データは改ざんし放題ですべての電子証拠を疑ってかかれと言われているようで、この本の他の部分とは熱さが違う感じがしますが、電子データの改ざんを見破るために比較的容易な手段がある(でも、知らなかったし、一度読んでも身につきそうにない)ということは頭に置いておきたいところです。その意味で、このあたりは、裁判実務関係者には必読なのかもしれないと思います。もっと詳しく実用的な解説書も、私が知らないだけであるのかもしれませんが。こういう指摘(Teamsを利用したWeb会議なら電子証拠の改ざんを弁論準備期日/書面による準備手続期日に見抜ける可能性があるという指摘)を読むと、Teams嫌い(Web会議嫌い)の私も、TeamsによるWeb会議を見直さねばという反省の気持ちが生じます。といって、この本で求めているような電子証拠のチェックを現実に率先してやる裁判官や、当事者が求めた場合にその場で実行する裁判官が現実にいるかは、たぶん期待薄でしょうけど。
 この「電子証拠の原本の取調」関係部分と、あとはアメリカでの実践関係が日本の実務でもひょっとしたらという未来図を感じさせてくれて(でも日本ではディスカバリーはやっぱり導入されないだろうなと、現実には思いますが)刺激的でした。


町村泰貴、白井幸夫、櫻庭信之編 民事法研究会 2021年12月10日発行(初版は2016年)
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