菅首相による学術会議任命拒否問題と新型コロナウィルス感染症対策での専門家会議の位置づけを契機に、政権・官僚と専門家の関係について論じた本。
大まかには、官僚機構が外部の専門家の知識と専門家に諮ったという外形を利用して政策を進めてきた(原子力問題では官僚には巨大技術を扱う能力・知識がなく原子力ムラに翻弄されたと評価:222ページ等)が、第2次安倍政権に象徴的にみられるような新自由主義政策(小さな政府志向で官僚が扱う領域が減少)の下で官僚の士気が下がり、官邸に人事権を掌握されて官僚が官邸にすり寄り、さらに政権が正規の審議会等を無視して「有識者会議」を駆使して思い通りの意見を出させるようになってきていることを説明しています。著者の怒りは、そういった政治・官僚の思惑にすり寄る専門家の側の浅ましさにも向けられているのですが、全体としては経緯の説明が多くを占めています。
新型コロナウィルス感染症対策関係では、安倍首相の突然の公立学校一斉閉鎖の「お願い」、菅首相の重傷者以外は自宅療養を原則とする(事実上見捨てる)という方針決定が、専門家会議に事前に諮られずになされたことについて、政権は何のために専門家会議を設けたのか、専門家会議は事後であれなぜ専門家としての意見を表明しないのかと論難しています(158~162ページ等)。まさにそのとおりだと思います。
司法制度改革では、法科大学院についての大学側の「バスに乗り遅れるな」とばかりの設置フィーバーのすさまじさ、日頃教壇で正義、社会的平等、公正、人権といった価値を強調していたはずの法学者たちが「法科大学院がなければ大学の格に係わる」といった発言をすることはどこで整合するのかなどを厳しく批判しています(201~206ページ等)。法学部の学者さんからロースクール問題での大学側の問題点について自分より厳しい意見を聞くとは思いませんでした。著者の批判精神に敬服します。

新藤宗幸 朝日選書 2021年12月25日発行
大まかには、官僚機構が外部の専門家の知識と専門家に諮ったという外形を利用して政策を進めてきた(原子力問題では官僚には巨大技術を扱う能力・知識がなく原子力ムラに翻弄されたと評価:222ページ等)が、第2次安倍政権に象徴的にみられるような新自由主義政策(小さな政府志向で官僚が扱う領域が減少)の下で官僚の士気が下がり、官邸に人事権を掌握されて官僚が官邸にすり寄り、さらに政権が正規の審議会等を無視して「有識者会議」を駆使して思い通りの意見を出させるようになってきていることを説明しています。著者の怒りは、そういった政治・官僚の思惑にすり寄る専門家の側の浅ましさにも向けられているのですが、全体としては経緯の説明が多くを占めています。
新型コロナウィルス感染症対策関係では、安倍首相の突然の公立学校一斉閉鎖の「お願い」、菅首相の重傷者以外は自宅療養を原則とする(事実上見捨てる)という方針決定が、専門家会議に事前に諮られずになされたことについて、政権は何のために専門家会議を設けたのか、専門家会議は事後であれなぜ専門家としての意見を表明しないのかと論難しています(158~162ページ等)。まさにそのとおりだと思います。
司法制度改革では、法科大学院についての大学側の「バスに乗り遅れるな」とばかりの設置フィーバーのすさまじさ、日頃教壇で正義、社会的平等、公正、人権といった価値を強調していたはずの法学者たちが「法科大学院がなければ大学の格に係わる」といった発言をすることはどこで整合するのかなどを厳しく批判しています(201~206ページ等)。法学部の学者さんからロースクール問題での大学側の問題点について自分より厳しい意見を聞くとは思いませんでした。著者の批判精神に敬服します。

新藤宗幸 朝日選書 2021年12月25日発行