マイノリティや非正規雇用労働者だけではなく、中流層が競争を強いる構造に耐えきれなかったりちょっとしたきっかけで没落して貧困に陥るようになっているアメリカと日本の状況を論じた本。
民間保険のコスト削減要求のために治療法が制限されて医療の質が落ち、医師のリストラのために過重労働に陥り、医療過誤も増え、医療過誤の保険料が高騰した結果、誇りを失い過労に陥りそして収入の大半を保険料に充てざるを得なくなって低所得者層に陥った医師たちと、生徒の成績などでのノルマを達成できないとリストラや廃校が待っているという「自己責任」のチャータースクールと「落ちこぼれゼロ法」に追われて過重労働と鬱状態から辞めていく教師たちといった、高学歴の中流層が市場原理に飲まれて貧困層に陥っていくアメリカの状況が最初に説明されます。しかし、アメリカでは、寄付・チャリティが富裕層のステイタスでもあり、慈善の精神が根付いているので教会主体のスープキッチンと呼ばれる無料給食所に行けば餓死することはない。アメリカではホームレスは依存症の問題と捉えられていて、失業しただけでホームレスにまでは落ちない。
しかし、何でもアメリカのマネをして競争原理の新自由主義政策を推進する日本には、医療保険以外の社会保障は貧弱で(しかも医療保険も急速に削減し滞納者からは保険証を取りあげて貧困者からは医療を奪うようになっている)生活保護は申請できるような広報はなされず申請しても行政の水際作戦で事実上受給できないことが多く、そしてチャリティは根付かずNPOも少なく弱いため、失業が直ちにホームレスにつながり、餓死者も出る始末。
日本でも正社員も人員削減と非正規雇用労働者の低賃金の圧力で過重労働を強いられ、賃金減額やリストラの脅威にさらされていて、多くの正社員がすでにワーキングプアといってよい状態だし失業によりホームレスになりかねない状態になっている。貧困を他人事と捉え、自分だけは生き残れるという幻想を持つことが、危険というより、今やそう考えていること自体難しい時代となっているというのが、著者の主張です。
状況の評価だけでなく、当事者が語ることでメディア・社会を動かし、一政党の立場でなく政策で語るとともに有権者として政治家を巻き込み、消費者としての不買・ボイコット運動で企業を巻き込み、メディアは褒めて育てて、訴訟でも闘う、一個人ができる実践を提案していくというような解決へのメニューが最後に語られているところがいいですね。それを具体的にどう実践するかはさらに考えないといけませんが。

堤未果、湯浅誠 角川oneテーマ21 2009年3月10日発行
民間保険のコスト削減要求のために治療法が制限されて医療の質が落ち、医師のリストラのために過重労働に陥り、医療過誤も増え、医療過誤の保険料が高騰した結果、誇りを失い過労に陥りそして収入の大半を保険料に充てざるを得なくなって低所得者層に陥った医師たちと、生徒の成績などでのノルマを達成できないとリストラや廃校が待っているという「自己責任」のチャータースクールと「落ちこぼれゼロ法」に追われて過重労働と鬱状態から辞めていく教師たちといった、高学歴の中流層が市場原理に飲まれて貧困層に陥っていくアメリカの状況が最初に説明されます。しかし、アメリカでは、寄付・チャリティが富裕層のステイタスでもあり、慈善の精神が根付いているので教会主体のスープキッチンと呼ばれる無料給食所に行けば餓死することはない。アメリカではホームレスは依存症の問題と捉えられていて、失業しただけでホームレスにまでは落ちない。
しかし、何でもアメリカのマネをして競争原理の新自由主義政策を推進する日本には、医療保険以外の社会保障は貧弱で(しかも医療保険も急速に削減し滞納者からは保険証を取りあげて貧困者からは医療を奪うようになっている)生活保護は申請できるような広報はなされず申請しても行政の水際作戦で事実上受給できないことが多く、そしてチャリティは根付かずNPOも少なく弱いため、失業が直ちにホームレスにつながり、餓死者も出る始末。
日本でも正社員も人員削減と非正規雇用労働者の低賃金の圧力で過重労働を強いられ、賃金減額やリストラの脅威にさらされていて、多くの正社員がすでにワーキングプアといってよい状態だし失業によりホームレスになりかねない状態になっている。貧困を他人事と捉え、自分だけは生き残れるという幻想を持つことが、危険というより、今やそう考えていること自体難しい時代となっているというのが、著者の主張です。
状況の評価だけでなく、当事者が語ることでメディア・社会を動かし、一政党の立場でなく政策で語るとともに有権者として政治家を巻き込み、消費者としての不買・ボイコット運動で企業を巻き込み、メディアは褒めて育てて、訴訟でも闘う、一個人ができる実践を提案していくというような解決へのメニューが最後に語られているところがいいですね。それを具体的にどう実践するかはさらに考えないといけませんが。

堤未果、湯浅誠 角川oneテーマ21 2009年3月10日発行