高校の同級生と結婚して専業主婦になったが家事育児に非協力的な夫やわがままな舅に不満を持つ知子、会社で副部長となっているが未婚である故に母親にも評価されず不公平だと感じている薫、男に騙されて故郷を捨てて東京で遍歴を重ね低賃金労働にあえぐ晴美の3人の兵庫県の高校同窓生が東京で出会いたまたま入った飲み屋の奥に人生をリセットする不思議なボタンがあり、高校生時代に戻されて人生をやり直すというストーリーの小説。
ある種安易な設定ですが、意外に巧いと感じました。3人が47歳の中年のおばさんの記憶を持ちながら高校生に逆戻りすることで、高校時代にはわからなかった母親の苦労を身に染みて感じ、また自身が母親の年齢を超えて自分の母親よりもできていないことを実感する第2章に考えさせられ、最初不満だらけのわがままぶりが鼻についた3人の殊勝さに好感を持たせます。でも人生をやり直してみると、前の人生よりやりたいことをやっているのにまたぞろ不満ばかり言う3人に、そしてさらに再度人生をやり直すためにいつぞやの飲み屋を探す3人のわがままぶりに呆れます。しかしその飲み屋を見つけた3人の選択で予想外の展開をさせ、最後に違う人生を経験した3人が意外な強さを見せて、不平を言い続けるのではなく現状を変えていこうと動き出すラストが、それ以前の不平不満ぶりと対照的で、ちょっと光ります。そのあたりの読者の感じ方をコントロールする展開に巧さを感じたわけです。
設定からして「隣の芝生は青い」という結論に行くことが最初から予測されるわけですが、親への評価部分とラストの積極性が予想を少し裏切って読んでいて心地よかったです。作者が、そして登場人物が、自分とほぼ同い年ということで私が共感しやすかったということもあるかとは思いますが。

柿谷美雨 双葉社 2008年2月20日発行
ある種安易な設定ですが、意外に巧いと感じました。3人が47歳の中年のおばさんの記憶を持ちながら高校生に逆戻りすることで、高校時代にはわからなかった母親の苦労を身に染みて感じ、また自身が母親の年齢を超えて自分の母親よりもできていないことを実感する第2章に考えさせられ、最初不満だらけのわがままぶりが鼻についた3人の殊勝さに好感を持たせます。でも人生をやり直してみると、前の人生よりやりたいことをやっているのにまたぞろ不満ばかり言う3人に、そしてさらに再度人生をやり直すためにいつぞやの飲み屋を探す3人のわがままぶりに呆れます。しかしその飲み屋を見つけた3人の選択で予想外の展開をさせ、最後に違う人生を経験した3人が意外な強さを見せて、不平を言い続けるのではなく現状を変えていこうと動き出すラストが、それ以前の不平不満ぶりと対照的で、ちょっと光ります。そのあたりの読者の感じ方をコントロールする展開に巧さを感じたわけです。
設定からして「隣の芝生は青い」という結論に行くことが最初から予測されるわけですが、親への評価部分とラストの積極性が予想を少し裏切って読んでいて心地よかったです。作者が、そして登場人物が、自分とほぼ同い年ということで私が共感しやすかったということもあるかとは思いますが。

柿谷美雨 双葉社 2008年2月20日発行