伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

風の牧場

2008-05-09 23:40:17 | 小説
 母親が離婚した母子家庭で育ちフリーライターとなるが結婚退職して専業主婦になりしかしそれにも不満でまたライターの仕事を始める美名子の、ライター時代、高校時代、新婚時代、仕事再開時、中学時代、中年期を描いた短編連作集。基本的にはほとんどの話が親族との関係に結びつけられていて、それをテーマに読む感じになります。
 主人公が、ちょっと意固地でちょっとわがままで小意地悪い。これをどう読むかですね。誰にもありがちな、誰もがどこか持っている嫌な面と見て読むか、それを超えていると感じるか。私はどうも後者に読めて、読み心地が悪い。夫や義父に対する評価も、相手の善意の言動をことさら悪く取っているように思えますし、子どもの頃(182頁)はともかく、40にもなって自分の未熟さを両親が離婚したせいにして母親にぶつける(198頁)姿にはただあきれました。そのおかげで、美名子がまわりにする評価とは逆に/別に、まわりの人はみんなできた人、少なくとも普通の人にみえます。そうすると、わがままで意地の悪い未熟な主人公が、最後に40過ぎてようやく、ことあるごとにそのせいにしてきた両親の離婚の呪縛から解き放たれて、優しい気持ちになれて成長したという話に読むべきでしょうか。


有吉玉青 講談社 2008年3月31日発行
コメント
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