伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

ネットオークションで騙す

2008-05-12 08:08:42 | ノンフィクション
 1998年~2000年にかけてイーベイのネットオークションで無名画家の絵画を著名画家の作品のように匂わせて高額で売却し、最後には画家の署名を偽造して詐欺罪で起訴され、司法取引で執行猶予付きの有罪判決を受けた元弁護士の手記。
 著者が、最初は軍隊で一緒だった知人からネットオークションでの絵画の販売のうまみを知らされ、知人が仕入れてきた絵を出品して分け前をもらっているうちに、知人がサクラ入札をして価格をつり上げていることを知り、自らも良心を騙しつつサクラ入札をするようになり、さらには知人が画家の署名を偽造しているのではないかとの疑惑を感じつつ出品を続け、最後には自分も署名偽造に手を染めてしまった様子が詳細に書かれています。
 同業者として、著者が現役の弁護士でありながら、違法行為に手を染めていくいきさつは、理解しがたいものがありますが、同時にサイドビジネスの誘惑には気をつけねばと改めて思います。著者は大規模事務所の勤務弁護士として市の代理人をする仕事に興味を持てなかったと述懐していますが、日本でも少なくない弁護士がバブル時代にサイドビジネスとその破綻から身を持ち崩していったことが思い起こされます。
 著者は、署名を偽造した絵画がネットオークションで13万ドルもの高額で落札されたことからマスコミの注目を浴び、偽物ではないかとの報道がなされたところに売り主が弁護士であることがさらに報道を過熱させ、ついには捜査機関の目にとまり訴追されて弁護士資格も失うことになります。
 詐欺のまかり通りやすいネットオークションの問題点やネットオークション関係者の実情とともに、犯罪を犯してしまう者の心理、そしてFBIの捜査や司法取引の実情など、興味深い事実が弁護士の観察眼と知識の下でレポートされていて、参考になりました。


原題:FAKE:FORGERY,LIES,&eBAY
ケネス・ウォルトン 訳:岡真知子
光文社 2008年2月25日発行 (原書は2006年)
コメント
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