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伊東良徳の超乱読読書日記

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エンドレス・ワーカーズ 働きすぎ日本人の実像

2008-01-03 11:37:11 | 人文・社会科学系
 日本人の労働時間と長時間労働の原因等について分析した本。著者は政府系のシンクタンク労働政策研究・研修機構の研究員で、原因等の分析については主に自ら行ったアンケート調査に基づいて統計的な側面から論じています。
 年間労働時間の「平均値」では減少傾向にある日本の労働者の労働時間ですが、それは正社員がリストラされて非正規雇用に置き換えられているためで、例えば週60時間労働をしている労働者の割合という形で調査すれば増加している(2~5頁)し、正社員とパートタイマーに分けて労働時間を調査するとどちらもほとんど変わっておらず(174~175頁)、パートタイマーの残業は増えている(176~178頁)そうです。週50時間以上労働している労働者の割合で見ると日本は先進国の中では突出して高い(10~13頁。但し、アジアでは低い方:14~18頁)とか。
 残業の理由として最も多いのは「業務量が多い」ため(68~70頁)で、サービス残業が長くなる要素は「男性」「若年層」「営業販売職」「医療・教育関係の専門職」「1年前より労働時間が増加した人」「余暇よりも仕事に生き甲斐を感じる人」だそうです(54~60頁)。要するに与えられた業務が多すぎて残業せざるを得ないし顧客との関係で残業が多くなり、前よりも増えた残業は残業手当を請求できずにサービス残業になりやすいということですね。
 著者は長時間労働の解消のための提言として勤務時間の厳密な管理(把握)と業務量の調整権をある程度労働者に与えることを挙げています(228~234頁)。地味な提案ではありますが実務的な提案でもあり注目しておきたいと思います。
 全体に政府系シンクタンクということもあってでしょう、労働者側が自主的に残業している面もあるということを繰り返し指摘して経営者側だけが悪いという評価を回避していますし、アンケート調査に基づく分析はデータを見ると差異がそれほどでもないことも多く数字の説得力が今ひとつとも感じますが、長時間労働の解消に向けた実務的な仕事として評価しておきたいと思います。


小倉一哉 日本経済新聞出版社 2007年11月7日発行
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