四半世紀前に死んだ母が残した自分の名前でのコンサート主催の予約を知らされ、その実現に向けて奔走することになった女性教師を軸に、死に向かいつつある筋ジストロフィーの青年の家族捜しと、殺人事件の捜査が絡みながら進展するミステリー仕立ての小説。
主人公が人の死の予兆を見ることができたり、埋もれた才能が次々と発掘されたり、まるで世界が100人の村だったらというか冬のソナタというか登場人物が偶然にも事件や血縁で結ばれた人だったとわかっていく展開が、いかにも都合よすぎですが、それを受け容れられれば、ジグゾーパズルのピースがはまった快感で読めていけます。だから「女神」であり、それが運命なんでしょう。非現実的な設定ではありますが、人の運命を動かせるとしたら自分はどうすべきかっていうことを考えさせられます。
ところで、お話の中で警察官が、やたら裁判員制度を意識して、裁判員だと自白だけじゃ無理だ、物証がいる(203頁、215頁)とか、早く自白すれば裁判は1年くらいで終わる(287頁、292頁)とかいうのは業界人としてはちょっと溜息。裁判員がきちんと証拠にこだわってくれることには期待したいところですけど。自白している事件で1年なんて引き延ばしたってかからないし、何よりもこのお話の設定が2007年8月31日にコンサートがあり(15頁)その日の逮捕ですから裁判員制度の実施まで1年半以上あるのでこの事件が裁判員に裁かれることはおよそあり得ないんですが・・・
大石英司 中央公論新社 2007年10月25日発行
主人公が人の死の予兆を見ることができたり、埋もれた才能が次々と発掘されたり、まるで世界が100人の村だったらというか冬のソナタというか登場人物が偶然にも事件や血縁で結ばれた人だったとわかっていく展開が、いかにも都合よすぎですが、それを受け容れられれば、ジグゾーパズルのピースがはまった快感で読めていけます。だから「女神」であり、それが運命なんでしょう。非現実的な設定ではありますが、人の運命を動かせるとしたら自分はどうすべきかっていうことを考えさせられます。
ところで、お話の中で警察官が、やたら裁判員制度を意識して、裁判員だと自白だけじゃ無理だ、物証がいる(203頁、215頁)とか、早く自白すれば裁判は1年くらいで終わる(287頁、292頁)とかいうのは業界人としてはちょっと溜息。裁判員がきちんと証拠にこだわってくれることには期待したいところですけど。自白している事件で1年なんて引き延ばしたってかからないし、何よりもこのお話の設定が2007年8月31日にコンサートがあり(15頁)その日の逮捕ですから裁判員制度の実施まで1年半以上あるのでこの事件が裁判員に裁かれることはおよそあり得ないんですが・・・
大石英司 中央公論新社 2007年10月25日発行