伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

インドの衝撃

2008-01-30 08:37:07 | ノンフィクション
 2007年1月に3回シリーズで放映されたNHKスペシャル「インドの衝撃」取材班の取材によるインドの現状レポート。
 最近のインドを紹介するレポートは、従来の宗教とカースト、貧困のインド像を否定すべく、判で押したようにIT技術者と「新中間層」と政治大国化という新しいステレオタイプに陥る傾向にありますが、やはりそういう内容のレポート。
 ただ、政治大国化を扱った第3回の後半は、経済自由化の煽りを食って綿花価格が暴落し、土地に合わない高価格の遺伝子組み換え綿花や化学肥料を売りつけられながら収穫も減り多額の借金を抱えて自殺地帯と化したコットンベルトの惨状や経済特区のための強引な土地収用で農地を追い出されて反対闘争に決起する農民たちなど、経済政策の犠牲者たちを描いていて、危ういところでバランスを残した感じです。核実験を敢行し包括的核実験禁止条約への署名も拒否しながらアメリカとの関係を改善し核協力まで取りつけた政治力への羨望/畏怖と密接な批判とも感じますけどね。
 それはさておき、私としては、卒業生がアメリカの一流企業から引っ張りだこの超エリート大学インド工科大学(IIT)に貧しい家庭の子どもたちが合格できるように授業料免除・家賃食費文房具代も免除で特訓するラマヌジャン数学アカデミーを経営するアーナンド・クマールの話(101~105頁)に共感しました。クマールは自らがケンブリッジ大学に入学を許可されながら貧しさのために断念し、貧しい若者が学べるようにと思い立って質素な暮らしをしながら経営を続けているといいます。しかもクマールはNHKスペシャルでの放映後出てきた寄付の申し出に対して、身のほどにあった範囲でやっていきたいからと寄付を断ったといいます(115~116頁)。志の高さに感心します。


NHKスペシャル取材班 文藝春秋 2007年10月30日発行
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