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伊東良徳の超乱読読書日記

はてなブログに引っ越しました→https://shomin-law.hatenablog.com/

官邸崩壊 安倍政権迷走の一年

2008-01-02 19:18:07 | ノンフィクション
 政界エリートの血筋と温厚な人柄と高い支持率に恵まれた安倍政権がスキャンダルまみれになり支持が急落して参院選で歴史的惨敗を喫する経緯についてのレポート。
 お友達内閣と揶揄された露骨な論功行賞・側近重用人事の結果、官邸に配置された人材が経験・能力・行動パターン(他人への目配り)において適切ではなく、しかも意思疎通・情報交換が不十分で十分な準備と覚悟なく地位につき事に当たったことから対応に失敗していったということが、繰り返し語られています。
 政治家として修羅場をくぐる必要もなくその経験も少ないエリートが若くして上りつめたために「お友達」に十分な人材がいなかったということでもあるのでしょうか。しかし、トップの若さという観点でいえば、日本でこそ安倍首相は若くして就任したと言えますが、欧米では40代のトップが珍しくもないわけで、本当はトップが若くてもうまく回るようなスタッフを確保するシステムが大事なのだと思います。お友達を押し込むのではダメなことは明らかですが、派閥の長老の意見に従えばよかったのかというとそれもまた困ったものですし。
 極端な国家主義指向と強行採決を繰り返した反民主主義的な姿勢から安倍首相には反感しか感じませんでしたから、その政治姿勢や手法で崩壊するというストーリーなら自業自得・当然と思いますが、スタッフの人材不足・意思疎通の欠落・対応のまずさで沈んでいくというストーリーを読まされると、これでいいのかなあということの方を考えさせられました。


上杉隆 新潮社 2007年8月25日発行
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子どもが忌避される時代 なぜ子どもは生まれにくくなったのか

2008-01-02 10:24:48 | 人文・社会科学系
 少子化を解決するためには、産み育てやすい環境整備等の政策では足りず、若い世代に生じている子どもを忌避する心性を解明し子供を産み育てることの意義付けを付与していく必要があるということを論じた本。
 子どもを忌避する心性は女性個人に帰せられるものではなく、家の継承や国家の人的資源として無前提に出産が善とされた時代が去り子供を持つことの新たな(それに代わる)社会的意義が見いだせないことや医療や流通の発達により子どもの成育に親が絶対的に必要とはされなくなるなどを背景に親子関係が変化したこと、モータリゼーションと公園の貧弱さ等と子ども部屋の標準化で子どもが個室に追い込まれ/閉じこもること、子ども向けメディア(漫画・ケータイ等)の発達や少年犯罪とその報道などによる世代間の意識のギャップ等の社会情勢によりこの1世紀をかけて醸成されてきたものと論じています。
 言われていること自体は、なるほどとも思いますが、それぞれのテーマの論じ方は、社会が子どもをどう位置づけてきたか、子どもの視点から親がどう見えてきたかの方に重きがあり、まとめで突然そういう事情で親が子どもを忌避する心性を持つようになったと述べているのがどうも読んでいて違和感があります。たぶん著者が専門の子ども学の関係でこれまで書いた論文を集めて各論文のはじめとまとめを少しリライトして1冊にしたんじゃないかなという気がします。もしそうなら最初からそう書いて初出誌も明示して欲しいのですが。
 そういうところ1冊の本として読み通すのにしっくり来ないのですが、産まない母親に非難を向けるのではなく社会的な問題と捉えましょうという姿勢自体は共感できます(精神論に走って産み育てやすい環境整備をさぼる口実にされなければですが)。
 しかし、最後に著者が示す解決策が、人類の種の存続という公的目的のためというのはちょっとねぇ。日本の若い世代が産まないのなら、日本は多産多死が続く南半球に支援をして種の存続に貢献し、日本の文化伝統の存続を希望するなら南半球で生まれた子を養子にして育てればいい、生み育てることを拒否するならば血縁幻想も捨てるべきだ(298~303頁)というのは、そこまで言われれば論としての筋は通っていますし、目からウロコではあるのですが・・・


本田和子 新曜社 2007年10月25日発行
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