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佐治城 近江 一部は失われたが意外に多くの興味深い遺構が残る佐治氏の城郭

2022-03-03 | 歴史

佐治城は滋賀県甲賀市甲賀町小佐治にあります。城主は佐治(小佐治)氏とされ織田信長の侵攻で信長配下となりましたが、その後いわゆる甲賀破儀で秀吉に抵抗し攻められてれて落城したとされます。戦後の開墾で遺構の大半が消滅したとされますが、現地を見ると意外に興味深い多くの遺構が確認できました。遺構は規模の大きな城域を持つ曲輪群と小規模な2つの曲輪群が少し離れて所在していました。
 消滅したとされる部分は牧草地として利用され、近年まで放牧が行われていたようで、付近には畜舎などが残っていました。
 今回の資料は  「甲賀市史 第七巻 甲賀の城」甲賀市史編さん委員会編2010  などです。


佐治城 小佐治集落の北側の丘陵地帯に城は築かれている 
 佐治氏は北側の野洲川に沿った平野部から南側の佐治川に沿った地域を領していた雄族だったようで佐治城もそれに応じた大きな規模の城郭だったと想像しました。
 ネットの情報などで今回は丘陵の尾根に当たる部分に駐車して見学しましたが、佐治神社や安楽寺のある南側には城殿(じょんと)の地名があり南側の127号線方向からの道が大手道のようですね。
 ※野洲川沿いの伊佐野城も規模が大きい→こちら
 

佐治城 Ⅲ郭、Ⅳ郭は別の城の可能性がある 愛宕山の平場は物見か
 佐治城の復元案によると面積の広い平場には2つの方形の曲輪ⅠとⅡがあり、残存する枡形池aは堀だったとされます。ⅠとⅡの間にも堀があり枡形池に通じていたとされますが、今は埋められて一体の広い平坦地でした。


佐治城 枡形池3 今も水をたたえている
 落城時に城主の奥方が入水したなどの伝承がある枡形池の南側には土塁が設けられていて水堀と土塁の厳重な守りの曲輪だったようです。
 

佐治城 手前にⅡ郭  奥にⅠ郭    右に土塁イ     東から
 堀と土塁に囲まれた広い方形の曲輪が東西に2つ並んでいたとされます。後世の造成などで消滅した部分がありましたがⅠ郭、Ⅱ郭の周囲をよく見ると、城郭遺構の痕跡をかなり見ることが出来ました。


佐治城 愛宕山  山頂部の平場3 石祠が祀られている
 平場3には土塁等はなく、ほとんど人の手が加えられていないように見える地形でした。資料では城域外の可能性を指摘していますが、見張り台という見方もあるようです。カシミール3Dの地形再現機能「カシバード」で確認すると、周囲の樹木がなければ佐治城周辺の十を超える城がここから見えたと推定できましたので、見張り台の説も有りかなと思いました。


佐治城 堀切b 西から  手前に土橋    右上に愛宕山
 Ⅱ郭と愛宕山との間には堀切bが設けられていました。堀切は道(土橋)を挟んで西側にも続いていました。


佐治城 堰堤1と堀ホ           堀ホには水がある 
 Ⅰ郭とⅡ郭の間を堀で区切っていたとされます。資料では特に触れていませんがヒョットすると堀ホはその残存部分ではないかと思いました。堰堤部分は道(土橋)として利用していた可能性がありそうでした。後世の農業用の溜池も考えられますが周囲の状況からその可能性は低そうに思いました。


佐治城 Ⅲ郭の北辺土塁2 東から
 Ⅰ郭の西側には隣接して平場チと谷を挟んで50mほど離れてⅢ郭がありました。Ⅲ郭は三段の平場の北辺を土塁2で括った形でした。Ⅲ郭の虎口は西側に設けられていて、そこから南下のⅣ郭への道がありました。


佐治城 平場チ  谷地形を挟んだⅢ郭の土塁2から
 平場チとⅢ郭の間には谷が入り込んでいました。付近にあった表示版によると谷は「十二谷」と呼ばれ、ここを通る峠道があったようです。往時の道かどうかは確認できませんが古くからの道だとすると、Ⅲ郭と平場チで峠道をの通行を監視していたと考えられそうですがどうでしょう。


佐治城 Ⅲ郭南西下の滝谷不動
 Ⅲ郭から南側の尾根上のⅣ郭に下る途中に滝谷不動が祀られていました。付近には現在も修験の行場がありますのでその関連の石造物だと思われます。城郭の存在以前から行場などが在ったかどうかは確認できていません。


佐治城 Ⅳ郭の虎口地形C 南下から
 Ⅳ角は単郭で、北辺に土塁、堀切を設け周囲を腰曲輪と切岸で守る形になっていました。曲輪の南辺の中央部には東から折れて入る虎口状の地形が設けられていました。資料によると後世に造られた地形の可能性を示唆していますが、多少の改変があるとしても虎口と見て良いのではないかと思いました。

資料では佐治城のⅢ郭、Ⅳ郭はⅠ郭、Ⅱ郭とは別の守将がいた可能性を記されていましたが、現地を見ると「そうかも知れない」と思えました。

今回紹介しきれなかった興味深い遺構がいくつもあり楽しく見学できてよかったです。機会があれば佐治神社から安楽寺への南からの道で見学してみたいと思いました。


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