城と歴史歩きを楽しむ

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近江・虫生野堂の前城 コンパクトながら遺構の残りが良好な平山城

2019-06-29 | 歴史

虫生野堂の前城は滋賀県甲賀市水口町虫生野にあります。
築城の歴史、城主等は定かではないようですが望月氏の関連が考えられるとされます。
城は南から来る尾根の先端部にあたり、虫生野の集落のいわゆる「村の城」の印象でした。単郭方形の土塁で囲まれた土の城郭です。
 今回も甲賀市史 第七巻 甲賀の城を片手に出かけました。


国土地理院地図をカシミール3Dで加工・加筆
丸山集会所の駐車スペースに車を停めて城址に向かいます。道がクランク状になっているのは、甲賀市史 第七巻 甲賀の城によれば防禦性の強い「鉤曲がりの道」の可能性を指摘しています。
 民家の間の狭い小道を登ると説明板のある城址の登り口に出ました。


虫生野堂の前城 丸山集会所からの全景
道は折れ曲がって先が見えない「鉤曲がりの道」で集落に入ります。丸で囲んだ部分には主郭の北西側の土塁が見えています。この部分に土塁の切欠きがありました。


虫生野堂の前城 土塁に囲まれた方形主郭の虎口は明瞭です
虎口から見ると右側の土塁の方が高く左側の土塁とは少し食い違って虎口を形作っています。


虫生野堂の前城 主郭内には伐採された竹が山積みされている
山城巡りでは竹やぶに悩まされることが多い。全く手入れされていないと竹が密集していて前に進めない場合もあるが、ここでは整備がされていて、主郭にはたくさんの伐採された竹が積み上げられていました。
 それでもご覧のように竹の成長は早いようです。


虫生野堂の前城 土塁の内側には武者走り状の段が設けられている
虫生野堂の前城の主郭の方形土塁のほぼ全周に亘って内側に段差が設けられています。甲賀市史 第七巻 甲賀の城では、土塁内側への崩落を防ぐ工夫と考えられるとしています。確かに土塁外側の切岸には部分的に土塁の崩落が見られるので、効果的だったかも知れません。「武者走り」は思い入れが強すぎるようですね。


虫生野堂の前城 土塁北西辺の虎口状の切欠き
丸山集会所から見えていた北西辺の土塁には切欠きがありますが、幅が狭く外側には接続する道がありませ。「甲賀の城」では開口部の幅が狭いところから虎口ではなくて曲輪内の水を排水する目的とみています。
 現状では切欠きの底は曲輪の面よりも高い位置にあるため、排水機能は果たせそうにありません。往時には切欠きがもっと深かったということでしょうか? 表面観察ではわかりませんでした。


虫生野堂の前城 搦手の道
主郭北東隅には土塁面から一段下がった搦手口があります。ここを出て下り土橋状の狭い道を左に折れ曲がり平坦面に出たところに浅い虎口状の地形があり城外の北へ出ることができました。
 ※平坦面付近は竹が密集していて写真ではさっぱりわかりませんでした。

コンパクトながら、土の城としての遺構の残りがよくて意外に面白い城郭ですが、竹やぶの整備は毎年行わないとあっという間に立ち入りが困難になってしまいます。このまま来年まで整備がされないと立ち入り困難になりそうだと心配でした。