辻原西砦と辻原東見張台は松阪市辻原町にあります。辻原は大河内城、坂内城を経由して多気の北畠氏の本城にいたる多気道と吉野方面へ向かう和歌山街道の分岐点にあり、この街道を扼する砦と見張り台として築かれたとされます。
今回は松阪山城会の皆さんが最近発刊された「松阪の城50選」を資料として出かけました。
※松阪の城50選は「松阪の城50選」発刊/松阪山城会 | 松阪市市民活動情報サイト で検索すると入手方法等についてもわかります。
辻原西砦・東見張台の築造者や来歴は今のところ不詳のようです。どちらの遺構も尾根上にあり尾根を断ち切る大きな堀切が見どころとなっていました。
辻原西砦・東見張台 和歌山街道の左右の山上に築かれ坂内川の上流、下流を見渡せる立地にある
辻原東見張台は主郭部分が5m×5m程の小さなものなので見張台と名付けられたようです。辻原西砦の主郭部分は15m×8mほどの削平地となっているので砦と命名されたと思われます。
辻原西砦・東見張台 駐車スペースと登り口 松阪の城50選の案内地図に案内図あり
辻原西砦へは写真左側の和歌山街道の旧道から登ります。東見張台へは駐車スペースの右手へ登りました。
松阪の城50選には駐車場の案内や見学路の案内が図で載っているので、初めて訪れた場所でも分かりやすくて助かりました。
辻原西砦 和歌山街道の旧道からの細い道を登る
細い道を登ると害獣フェンスがありましたが、ここにゲートがありましたので、開け閉めしてスムーズに進むことが出来ました。最近の山城は全山害獣ゲートで囲まれていてゲートの位置がわからなくて、見学を断念することもありますが、資料に載っている見学路に従って進むとゲートの場所へ出ました。
辻原西砦 主郭へ向かう尾根道の法面に半月状の削平地がある
ゲートから主郭までは尾根道になっていました。途中尾根道の法面の下に半月状の削平地がありました。
一般的には腰曲輪と名付けても良いような遺構です。資料では縄張図には描かれていますが名称は付けられていませんでした。
辻原西砦 主郭 樹木が伐採され辻原の町と坂内川の上流部の眺望が良い
主郭部分とその周辺は樹木が切り払われて見晴らしが素晴らしかったです。削平は自然地形に少し手を加えた程度で土塁等の遺構は見当たりませんでした。ここには町のサイレンが設置されていましたが、現役かどうかは分かりませんでした。現役だと、もし滞在中になったらびっくりするだろうな~などと思いました。
辻原西砦 主郭にある松阪山城会の辻原砦跡の表示板
主郭には松阪山城会の表示板があり辻原砦跡と表示されていました。資料では辻原西砦となっていますので、資料の発刊時に「西」を付けて命名したのではないかと想像しました。
辻原西砦 主郭西側尾根を断ち切る大堀切
辻原西砦の見どころはこの大堀切です。主郭の北、東、南は法面が天然の要害になっているので、弱点は西側尾根からの侵入と思われ、それを防ぐために尾根に大きな堀切が掘られたと考えられます。
大堀切を越した尾根にも土塁や二段の帯曲輪などの興味深い遺構を見ることが出来ました。資料の縄張図でも描かれていますが、現地で見ると風化により段差や平坦面の明確さが少し失われていました。
辻原西砦の構造は土塁曲輪などが北側の坂内川方向に対する備えとなっているようでした。
辻原西砦の見学を終えて次は辻原東見張台の見学に向かいました。
駐車スペースの上には石造物が多数祀られていましたがその裏側から登りました。明確な道はなさそうですので、エィヤッ!と斜面を登り尾根に取り付きました。藪漕ぎもないので資料に描かれている、途中の小さな遺構も見ることが出来ました。
辻原東見張台 主郭西下の尾根を断ち切る大堀切 見ごたえあり!
辻原東見張台の主郭は、東から伸びてきた尾根の西端部近くのピークにありました。主郭の東側の尾根は急な勾配になっているので、図の鉄塔までの間の尾根には防御の遺構は目立ちませんでした。
主郭の西尾根は街道からの攻撃を受けやすいためでしょうか、大堀切で厳重に防御しているようでした。
辻原東見張台 主郭の削平地は狭いが周囲は切岸で守られている。
主郭は現在は樹木で見通しは利きませんが、往時は広い範囲が見渡せた場所だったと思われます。まさに見張台と言えたと思いました。
削平地は5m×5mほどと狭いものですが、見張のためだけならこれで十分だったのかなと想像しました。
主郭周りには土塁や堀はありませんが「防御の要は切岸」の言葉通り、全周切岸が切られていました。切岸は部分的に風化が見られましたが、意外なほどはっきりと切り跡が残っていました。
辻原西砦・東見張台はコンパクトながら想像以上の大堀切を見ることができよかったです。
東海古城研究会の会員情報メールで「松阪の城50選」発刊を知り、松阪山城会に早速メールで申し込み、送って頂いきました。松阪山城会のメンバーの現地踏査による新発見の遺構だけでなく地誌、町史などの資料による情報も手際よくまとめられ、行き方や駐車場情報も載っていますので松阪の城巡りにはもってこいの情報がギッシリです。