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伊勢・今峯城 資料にない山上の城郭遺構にワクワク!

2020-11-13 | 歴史

今峯城は三重県津市美里町足坂にあります。
 「三重の中世城館」三重県教育委員会1976(1)で見かける以外で今峯城に関する資料が少なくて、資料(1)には縄張り図の掲載はなく、文章で『城址は高宮小学校の裏山にあり、東西に45m、南北もほゞ同様の平坦地があり、西に土塁が残され、一部に小さな社がまつられている』と記載されているだけでした。
 現地案内板によれば、都から長野氏を頼って長野城に立てこもった仁木義長に対して土岐氏一族が今峯氏を名乗り、長野街道を扼するこの地に築城し長野城に睨みを効かせたとされます。時は流れ、織田信長の伊勢侵攻で破れ廃城となったと伝わります。


今峯城 高宮小学校は廃校となり、城址は資料(1)に記載のない山上にも城郭遺構が残る
 現在、高宮小学校は廃校となり、一部に公民館がありました。ここから、入口に案内板のあるAのルートをたどりました。途中で分岐するのルートもあるようですが、今回は確認していません。往時の城道ははっきりわかりませんでしたが、帰路はは古い山道のBのルートを下りました。


今峯城 資料(1)の記述は図2のⅡ郭のようで、Ⅰ郭の記載はない
 今回の見学では、Ⅱ郭に気づかず通り越して上方へ登りⅠ郭へ出ました。そこには資料(1)の記載とは異なる遺構があり、戸惑いましたが、更に上方の尾根上には2条の堀切もあり、城郭遺構で間違いないようでした。
 Ⅰ郭の見学を終えて下る途中でⅡ郭、Ⅲ郭の存在に気付きました。Ⅱ郭はまさに資料(1)の記載通り、西側に土塁を備えた、広い平面を持った遺構で小社も祀られていました。


今峯城 Ⅰ郭上部の尾根を断ち切る堀切④ 東から これより北には遺構はなさそう
 Ⅰ郭の北側の尾根上には2条の堀切が見られました。④の堀切の北側もしばらく歩いてみましたが、遺構はなさそうでした。④の堀切の東側は、近年の山道で分断されていますが尾根の東側まで堀切が延びていた痕跡を確認できました。


今峯城  大堀切③ 西から 後世に山道として利用されていた可能性あり
 Ⅰ郭の北側の尾根筋を守る堀切は2条ありましたが、Ⅰ郭に近い堀切③の方が規模が大きかったです。旧地図や古い空中写真などを見ると、西側からの古い山道がここを通っていたかもしれません。


今峯城 Ⅰ郭 北辺土塁と浅い堀切(溝)   溝は土塁へ土をかきあげた名残かも
 Ⅰ郭の北辺には北側尾根に向かって土塁が築かれていました。土塁の南側には浅い堀切状の溝がありましたが、ヒョットすると土塁を築くために土を掻き上げた痕跡かもしれませんね。


今峯城 Ⅰ郭 南辺の虎口状地形⑥ 北側から 右手に土塁⑤
 Ⅰ郭は傾斜のある平坦面で、南西端に虎口状の地形⑥がありました。風化で輪郭がはっきりしませんが、規模の大きな、いわゆる内枡形の虎口のようでした。


今峯城 Ⅰ郭 傾斜と段差のある平坦面 西側は土塁 東側は切岸が防御施設か
 Ⅰ郭の地形は傾斜がありました。簡易な小屋掛け程度はできそうですが、屋敷地としてはⅡ郭が広いので、ここに小屋は不要かもしれず、はっきりした利用形態はわかりませんでした。


今峯城 Ⅱ郭 西辺の土塁   郭外は急な法面となっている 北から
 資料(1)に出てくる「西側の土塁」と思われます。Ⅰ郭とⅡ郭間の曖昧な地形の下に、広いⅡ郭があり、Ⅱ郭西側には分厚い土塁⑦がありました。土塁⑦の南端部は少し下がって平坦面⑧がありました。⑧には建物があってもよいぐらいの広さでした。


今峯城 Ⅱ郭 南から 左手(西側)に土塁が見える。平坦面中央部に低い段差がある
 Ⅱ郭は、中央部に低い段差のある見事な平坦面になっていました。後世の耕作地だったということがよくあるパターンですがここではどうでしょう。
 

今峯城 Ⅱ郭南西部に小社、忠魂碑、石造物などがある
 資料(1)にあるⅡ郭の「小さな社」と思われる祠などが祀られていました。道Cはここへのお参りの道かもしれません。忠魂碑は近代以降のものでしょうからこの付近の改変が行われた可能性がありそうですね。


今峯城 南端のⅢ郭 西から 奥にⅡ郭 右手奥に道A
 Ⅱ郭の南辺からⅠ段下がってⅢ郭がありました。Ⅲ郭の東端部は道Aに繋がる古い道のようでした。西端部は道C に繋がりますので、どちらかが往時の城道だったのではないでしょうか。

普段は縄張図持参での城址見学をする場合が多いのですが、今回は縄張図なしで今峯城を訪れました。結果、資料(1)の文章に掲載されていない予想外の遺構を見学することができ、大満足の楽しい見学となりました。
 

Ⅰ郭周辺はほとんど改変がなさそうですので、縄張図のエキスパートに作図していただきたいものだと思いました。




 

 


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