「イリュージョン」、という小説がある。
まだ10代だった頃僕はこの本をいつでも持ち歩いていた。
こんなシーンがある。大好きな場面だ。
救世主であることに嫌気のさした救世主、ただの飛行気乗りになった彼が、立ち寄った部品屋で何気なしにギターを手に取る。いままで一度もギターを触ったことのない彼は、流暢にギターを弾いてみせる。
「いつのまに練習したんだい?ギターが弾けるなんて全然知らなかったよ。」
そう云った相棒に、彼はいたずらっぽく笑ってみせる。
救世主なんだ。ギターくらい練習しなくても弾ける。問題はギターを弾ける自分を想像すること。
「イマジン、想像せよ。
世界は美しく完璧であると。」
そのときに弾いてみせた曲が「グリーンスリーブス」。
なぜか不思議と心にのこった。もちろん僕は凡人で救世主ではないので(とてもありがたいことに)、この曲が弾けるようになるまでかなりの練習をした。たどたどしく憶えたてのギターを手にし、ビール片手にいいあんばいの僕を当時よく部屋に遊びに来ていた猫氏は、つまらなそうに聴きながらあくびをしていた。
それから10年。
たまにこの曲を弾いてみる。
本棚からこの本が消えている。
5年前の引越しのどたばたにまぎれてしまったのだろう。
はじめて曲を聴いてくれた猫氏、野良猫トミーの行方ももちろんわからない。そういえば、あの街を出るとき彼に挨拶もしていなかったことを思い出した。
いろいろ変わったよ、街も人も。古い友達が電話越しにつぶやく。いちばん変わったのは俺たちだろう?口にはせずに、そうだな、と答える。
なんか作り話みたいだ、でも本当のことだ。
記憶が枯葉のにおいをしてきた。
もしまた大好きな人に出会えたら、この曲をきいてもらおう。
指が曲を憶えているあいだはまだ想像できる。
たぶんね。
まだ10代だった頃僕はこの本をいつでも持ち歩いていた。
こんなシーンがある。大好きな場面だ。
救世主であることに嫌気のさした救世主、ただの飛行気乗りになった彼が、立ち寄った部品屋で何気なしにギターを手に取る。いままで一度もギターを触ったことのない彼は、流暢にギターを弾いてみせる。
「いつのまに練習したんだい?ギターが弾けるなんて全然知らなかったよ。」
そう云った相棒に、彼はいたずらっぽく笑ってみせる。
救世主なんだ。ギターくらい練習しなくても弾ける。問題はギターを弾ける自分を想像すること。
「イマジン、想像せよ。
世界は美しく完璧であると。」
そのときに弾いてみせた曲が「グリーンスリーブス」。
なぜか不思議と心にのこった。もちろん僕は凡人で救世主ではないので(とてもありがたいことに)、この曲が弾けるようになるまでかなりの練習をした。たどたどしく憶えたてのギターを手にし、ビール片手にいいあんばいの僕を当時よく部屋に遊びに来ていた猫氏は、つまらなそうに聴きながらあくびをしていた。
それから10年。
たまにこの曲を弾いてみる。
本棚からこの本が消えている。
5年前の引越しのどたばたにまぎれてしまったのだろう。
はじめて曲を聴いてくれた猫氏、野良猫トミーの行方ももちろんわからない。そういえば、あの街を出るとき彼に挨拶もしていなかったことを思い出した。
いろいろ変わったよ、街も人も。古い友達が電話越しにつぶやく。いちばん変わったのは俺たちだろう?口にはせずに、そうだな、と答える。
なんか作り話みたいだ、でも本当のことだ。
記憶が枯葉のにおいをしてきた。
もしまた大好きな人に出会えたら、この曲をきいてもらおう。
指が曲を憶えているあいだはまだ想像できる。
たぶんね。
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