眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

二人のことば

2012-07-16 | 
凛とした空気
 白い息を吐きコートのポケットに手を入れた
  公園の木々の枝葉は枯れ果て
   灰色の空に手を伸ばした
    まるで
     まるで救いを求める彼等群集の様に
      僕はポケットの青いビー球を握り締めている
       この世界でただひとつ
        僕が所有する事を許された事象
         青い硝子玉は世界だ
          世界は不自由の中の自由だ
           完璧なる物など存在しない
            あるとすれば
             壊れかけたブリキの玩具に意図される
              こわれものだけなのだ

              水筒のふたを開け
             喉元にウイスキーを流し込んだ
            急がなければ
           やがて辺りが暗くなり
          世界の終焉がやってくる
         絶望の所作でお茶を立て
        魔法使いがざらついた舌先で世界を嘗め回す
       僕等は船に乗り込んだはずだった
      あのノアの箱舟の中で
     青い空を夢見
    公園で幸せな不自由さをもってお昼寝がしたかった
   凛とした空気
  赤い風船が空を昇る
 君だけはいつか天界に辿り着くだろうか?
愚弄したはずの神話的背景の
 その一部になるのだろうか
  永遠は無罪だ
   恫喝した警察官の職務質問には答えられない
    狡猾で利口なやり口で彼等は僕のビー球を取り上げようとする
     永遠は無罪だ
      誰かが異議なしと答えた
       時間は
        時間は残酷だ
         丁寧に記憶を磨耗させる
          僕等は忘れ行く
           僕等が僕等であった事ですら忘れ行く
            
           闇だ
          フクロウが僕等の首に針を刺す
         抑鬱的な情景から逃れられない
        常識や社会的規範の範疇から零れ落ちた
       こわれもの
      世界は冷たい青で存在を暴きだす
     白日の下で
    ね
   重厚な鐘の音が鳴り響く
  繰り返される安易な日常
 それその物が非日常である夕暮れの哀しみ
  不穏さをさらけ出し怯え逃げ出した僕等
   氷点下の事件
    僕等は果たして無事に逃げおおせたのだろうか
     真相は常に闇の中だ
      二人のことば
       君と僕
        世界は其処から始まり
         やがて無意識下に埋没される
          二人のことば
           それはきれいさっぱりと消え失せる
            それでも僕等は詩を歌った
             届かない君に宛てて手紙を郵便ポストに入れた
              懺悔は届かない
               届くはずの無い想いは砕け散る
                公園の寒がりな風景
 
                調弦が上手くいかない楽器
               鍵穴に合わない鍵の束
              赤い電話
             雨の日の解脱
            乖離された朦朧とした意識が
           白濁色で風景を眺めているという
          あの通り沿いのアパルトマン
         2階の窓から君が手を振っている
        宙を舞った赤い風船が君だ
       僕は君が無事に逃げ出すことを夢見ていた
      この混沌としたざらついた日常から
     君は世界の中心点から零れ落ちた
    こわれもの
   誰かが素早く忠告する
  バンドネオンがピアソラのタンゴを弾き始める
 届かない君に宛てて手紙を郵便ポストに入れた
手紙は不自由さの中から自由に辿り着けるだろうか
 やがて消え往く
  僕は永遠に動けない
   壊れた人形の様に唯じっとしている
    涙を流している
     哀しみ
      涙の一滴が青いビー球だ
       僕がこの世界でただひとつ所有する事を許された物
        ただ泣いている
         雨の中
          ただ泣いている
           泣くことが出来ない者達に代わって
            ただ涙を零すのだ
             やがて世界の終焉が訪れる
              ポケットの
               青いビー球を握り締め
                呼吸を止めて手紙を投函する
                 届くはずの無い二人のことば

                 ね


                 会いたいよ



                消えてしまった



                二人のことば

















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8 コメント

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Unknown (友子)
2012-07-20 01:02:55

唯ひとりに、気付いてほしい。。
私は此処にいるのだと…

きっと そっと
そんなふうに おもいながら いる のかなと 、おもう。

でも ひっそりと 誰にも気付かれたくないと、いる のかもと 、 おもったり。

こちらも梅雨明け
暑い 夏が やってくる!

おやすみなさい。
返信する
友子さんへ (sherbet24)
2012-07-22 01:47:10
呆れるほど僕は無口です。許して、お願いと祈っています。それだけが僕の全てです。
呆れるほど無口に。
お願い。許して。

ただ、愛してる。

愛おおしいくらい。

愛している。


返信する
Unknown (友子)
2012-07-23 00:03:33

下、三行の言の葉を
どれだけのヒトが、
、、、

そんなふうに 想えるヒトがいる事と、想ってもらえるヒトに、
双方にしあわせになってもらいたい!

返信する
Unknown (なおこ)
2012-07-25 00:43:25

Perhaps,I was Loved You very hard.
おそらくその日はひどい雨ふりだった。

Perhaps,It was raining very hard.
おそらくわたしはあなたに愛されていた。

この訳詞ならできるだけ無口なままでいられて、しかもふたりは消えない。と思った…。
返信する
友子さんへ (sherbet24)
2012-07-25 01:50:02
ありがとう友子さん。
消えそうな記憶たちの感触がまだ残っているうちに。

想いだしてあげたいのです。

返信する
なおこさんへ (sherbet24)
2012-07-25 01:56:07
僕はこの場所に辿り着きましたがそこが世界の果ての様な気がしてひどく困惑しています。

Perhaps,It was raining very hard

Perhaps,I was Loved You very hard.

なおこさん、
不条理な現実。それが現実なのでしょうか?
僕らはいつまで耐えられるのでしょうか?

ごめんなさい。

ひどく混乱しています。

ありがとう。


返信する
Unknown (なおこ)
2012-07-26 07:39:47
混乱させてたらごめんなさい。

ダナエの神話、美しい神話で大好きなんですが、愛が雨になって新しく生まれるものがあると…

哀しみ痛みは自分のものじゃない限りは食べてはいけない。

シシュフォスは苦役から逃げたのか、わたしがカミュなら、彼は自分を守ったという考えをします。
逃げた先は、逃亡先ではなく、別天地という解釈をします。
あまり自分を責めて苦しまないで、Sherbetさん。
今日も太陽が眩しいですね。

返信する
なおこさんへ (sherbet24)
2012-07-29 03:04:17
少年がこの世界から消えました。誰にも救われず永遠に虚空に手をのばして。
彼が消えたことは現実です。
僕は絶望しました。
こんな世界が現実なんて。

余りにも耐えられない。
僕は僕の世界で夢を見ているけれども、少年にはその可能性すら与えられなかった・・・。

僕らは無力です。

哀しみ痛みは自分のものじゃない限りは食べてはいけない。

その通りかも知れません。

だけどこの胸の痛みは消えません。

少年は叫んでいました。

助けてと。

僕らは無力で何も出来なかった。

僕は彼に許してとしか云えません。

苦しかったでしょう。ごめんね。

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