眠りたい

疲れやすい僕にとって、清潔な眠りは必要不可欠なのです。

マイヤーズ・ラム

2024-09-04 | 日記
弟というのは不思議な生物だ。
横浜の弟に電話で
  「煙草買ってきて。」
と云うと、間髪いれず
  「小銭切れてる、100円もってきて。」
と返された。
う~ん。

奴と一年位だけ一緒に暮らしたことがある。
もちろん酒浸りの日々だった。
我々は平日の昼間から、300円払って美術館の常設を眺め(夏の美術館はクーラーが効いている)
公園でホットドックをかじりながらビールを飲んだ。

  空は晴れている。

「兄ちゃん、みんなしあわせそうだね~。」
「おお、あっちでボール遊びしてるぞ!」
「なんかウッドストックってこんな感じだったのかな~?」
「あの犬の散歩している奥様がいいね~。」
「兄ちゃん、酒飲んでるの俺たちだけじゃん。」

家族連れやらカップルやら学生なのか何なのかわからない人々が、思い思いに人生を謳歌している。暑い夏の日、幻想のように世界が回った。たぶん、酔いのせいだろう。
生ぬるいビールはそれでも美味かった。
弟の得意料理は、パンにソーセージをはさみレンジで一分間温めた、名付けて「スペシャル・ドック」だ。ある珈琲ショップのサンドウィチを真似したらしい。
スパゲッティーをフライパンで味ぽんのみで味付けする、僕にはなんともいえないがこれがわりと美味かった。

弟はお洒落に気を使うほうだったし、スポーツもしていたので女の子受けは良かった。
まあ、違いはそんなもんで、やっぱり我が弟よ、お前も変な奴だった。

島から出る時、彼の友人一同は奴の首に派手なレイを巻きつけ、麦藁帽子をかぶせ、泡盛の一升瓶を抱かせとどめに椰子の実を持たせた。
空港で待っていた僕は、ゲートからでてきた奴の格好を見て呆然とした。
     「椰子の実って、お前それどうすんの?」
     「俺が知るか、くれた奴は部屋で育てろって云ってた。」
     「・・・。」

それでしばらく、僕らの部屋には椰子のみが泡盛の一升瓶と共に並べられていた。

酒はなんでも好きだったが、弟はマイヤーズ・ラムをこよなく愛した。
 理由は安くて、しかも効き目がはやい。
  どっかの風邪薬のCMみたいだ。

  「100円、探したぞ。」
  「じゃあ、持ってきて。煙草勝手くるから。」
電話のやりとりはいつもこうだ。
馬鹿が二人。
兄ちゃんは、お前が弟でほんとによかったぞ。

  
  あれからどれくらいの年月が流れたのだろう。








コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする