@人生には「裏と表」がある。ここでは「影」から「裏」へと人生を歩み始めた一人の男が迷い、特定な友しか話ができない環境を自らが作り、孤独となり最後には大震災の被災者となり消えていった。家族に見放され、仲間にも敬遠され生き続けた結果、選ばざる道に入り込りこみ、自然の神が奪いさった男である。 あまりにも酷い「運命」と言うより、自力で這い上がる勇気を見失った所為だろう。「生きていれば必ず逢える運」と言うものを信じことだ。周りの家族・友・仲間をもっと大切にすることでそれが見えてくるはずだ。(袖振りも合うも多少の縁)
『影裏』沼田真佑
- 第157回芥川賞受賞作。大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、ただひとり心を許したのが、同僚の日浅だった。ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、「あの日」以後、触れることになるのだが……。樹々と川の彩りの中に、崩壊の予兆と人知れぬ思いを繊細に描き出す。
- ある日の被災で友人を失くしたことがほぼ明らかになる。ところがその友人の父親は、勘当しており息子ではないし、遺族探しはしないと言う。過去の出来事から母親は早くに亡くなり長男と次男と父親の3人暮らしだった。次男のその友人は大学を合格したが4年間とその後どのような暮らしをしていたのか皆目見当も付かずだったという。ただ普通の生活ではない事は薄々感じていたと言う。それに借金を抱え犯罪に手をつけていたことも感じられた。