@戦後の生活から読み取る子供の心理。父親は強運の持ち主だったが体を悪くして亡くなる。母親一人で育った少年はどことなく父親を憎み、哀れみ、悲しんでいる姿が読める。羽振りの良い時とその後は天と地獄の世界のごとく少年の心にも響いてくる。この時代の子供の心理は、おもちゃも無く遊びは自然と一握りの同じ貧相レベルの友人だけと言う多分現代っ子には全く理解できない「親を思う心」「世間を渡る術」vs「親次第で将来が決まる」「親の言いなり」など当時の一時期生活の小説である。逆に言うと現代っ子は自然の摂理に理解も乏しく、自分で己を知らないから自分で進路も判断できない「親次第・何事も親に頼る世代」になってしまった。それは日本の起業・留学などにも大きく影響していると感じる。自立心が無くなり、海外への興味・勉強・好奇心が無くなる事は日本の経済の成長にも大きく繋がるのではと懸念する。
『螢川・泥の河』宮本輝
『BookDataより出典』戦争の傷跡を残す大阪で、河の畔に住む少年と廓舟に暮らす姉弟との短い交友を描く太宰治賞受賞作「泥の河」。ようやく雪雲のはれる北陸富山の春から夏への季節の移ろいのなかに、落魄した父の死、友の事故、淡い初恋を描き、蛍の大群のあやなす妖光に生死を超えた命の輝きをみる芥川賞受賞作「蛍川」。幼年期と思春期のふたつの視線で、二筋の川面に映る人の世の哀歓をとらえた名作。
- 「泥の河」
少年同士の付き合い方を考える物語で、戦後の生活環境が苦しい時の少年達の遊びと付き合いは限られていた。大人、親の言うことには忠実に逆らう事は決してない、また世間から見て曲がりもの等に関してはみんなが同じような見方をする時代である。なんとなく仄かであり、厳しい生活環境での子供でも世間体を気にした、現代では考えられない子供の世界を描いている。
- 「螢川」
一生に一度か螢が一斉に出る夜を待ち、少年と好きな少女、それに螢をよし知ったおじいさんとそれぞれの母親がせせらぎの山の奥へ見に行く。 そしてその螢の大群を見つける。「螢の大群は、滝壺の底に寂寞と舞う微生物の屍のように、計り知れない沈黙と刺繍を孕んで光の澱と化し、天空へ天空へと光彩をぼかしながら爪いた火の粉状になって舞い上がっていた」、その時皆がそれぞれの道を悟るのである。