血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

2019年 牝馬クラシックロード

2018-12-21 22:23:25 | 雑記・その他
 
 今回の血統徒然草は、2019年の牝馬クラシックロードにおける注目馬を何頭か取り上げたいと思います。
※後日、複数頭追加する予定です。

ダノンファンタジー(ディープインパクト×ライフフォーセール by Not for Sale)牝・16生

Ⅰ 主:5 結:6 土:3 弱:1 影:2 集:4 質:3 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(36/60)点 クラス:2B 
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□ 
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I □ C △ L ×
ダ:S 〇 M □ I △ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:〇 成長型:早め 

 主導はLyphard4×5の中間断絶を呼び水にした、Nearcticの系列クロス。次いで、Court Martial。それぞれ6代目に存在するSir Gaylord、Mahmoud、Khaled、Pharamondから、マイル~中距離向きのスピード・スタミナを補給し主導へと集合させた配合で、開花自体は早い。惜しまれるのはAlmahmoudが世代ズレをおこした点や、米系の取り込みの弱さ。また、祖母Doubt Fireの世代が新しく弱点を派生させた点で、やや信頼には欠けるか。しかしながら、開花自体は早いものの、7代目以降のクロス自体の生かし方は良く、ただの早熟タイプでも無い。多種のスピードの血が生き、実質的主導のLyphardへとしっかりと結合を果たした為に、ここの部分をしっかりと引き出せれば器用な競馬ができる可能性は秘める。早期有利のマイラータイプ。ダートはこなせる。

クロノジェネシス(バゴ×クロノロジスト by クロフネ)牝・16生

Ⅰ 主:4 結:5 土:4 弱:1 影:1 集:7 質:2 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(36/60)点 クラス:2B 
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:□ 
Ⅲ 距離適性
芝:S 〇 M □ I △ C × L ×
ダ:S 〇 M □ I × C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:早め 

 主導は不明瞭な配合で、おそらく父系母系ともに系列クロスを形成したNorthern Dancer。次いでMr.Prospecter、Halo。近親度がかなり強く、バランスも良好だとは言い難いものの、強調された父母Moonlight’Box内に前述の三者を存在させ、Nearco及びAlmahmoudで強固に結合させた上で、血を集合させたのは幸運で近親度の高さを考慮しなければ、その生かし方はかなり良好。この部分が本馬の能力の源泉だと言える。圧倒的にスピード優位の配合で、そのスピードにかなりの良さがあるとは言えるものの、決して器用なタイプでは無く、そのスピードで押し切る競馬が本質的にはあっているか。しかしながら、明確なスタミナの核を持たないため、距離延長に対する適性や成長力は高いとは言い難い。早熟スプリント~マイルタイプ。米系の影響からダートもこなせる下地はある。土台構造からの血の流れは良好で、信頼には欠けるものの好調期には強い競馬を見せる事も。

グランアレグリア(ディープインパクト×タピッツフライ by Tapit)牝・16生

Ⅰ 主:6 結:5 土:3 弱:1 影:2 集:5 質:3 再:3 SP:4 ST:3 特:0
合計:(35/60)点 クラス:2B 
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□ 
Ⅲ 距離適性
芝:S △ M 〇 I 〇 C □ L ×
ダ:S △ M □ I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:普通 成長型:普通 

 主導は、位置の関係からTurn-toの系列クロス。その仔であるSir Gaylordが母系であるSomethingroyalを取り込み、結合とスタミナのアシストを行っている。また、Turn-toのクロスでは取り込めないHyperionをNorthern Dancerが取り込んでいる。しかしながらHail to ReasonやAlmahmoudが世代ズレを起した点や、Nijinskyを主導にSecretariatをスタミナの核とした母の傾向とは著しく傾向が離反し、この父母の相性は本質的にはあっていないと言える。救いは、39と少ないクロス馬で全体を構成し、父父サンデーサイレンスのスピードを再現した事で、この部分は、全体としての血統構成を比べるべくも無いが、祖父の最高傑作であるサイレンススズカ(2A)と相似性はある。本質的には芝向きマイル~中距離タイプだが、距離延長に対する適性自体は低くは無い。

シェーングランツ(ディープインパクト×スタセリタ by Monsun)牝・16生

Ⅰ 主:7 結:6 土:3 弱:2 影:2 集:5 質:4 再:3 SP:3 ST:4 特:0
合計:(39/60)点 クラス:3B 
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇 
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I 〇 C 〇 L □
ダ:S × M □ I □ C △ L ×
芝適性:〇 ダート適性:△ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:普通 成長型:遅め

 主導はNorthern Dancerを呼び水にした、父父内Almahmoudの系列クロス。次いでHurry Onを生かしたCourt Martial。優秀な配合である姉ソウルスターリング(1A)程の迫力は無いが、ウインドインハーヘア内はRomanこそ世代ズレするものの、生かし方が良く、特にBurghclere内は、Donatelloの系列クロスがスタミナの核を形成し、MassineやSolarioのスタミナや、Fair TrialやGold Bridgeのスピード等も隠し味的にしっかりとクロスしている。Allegrettaを全開させた姉に及ぶべくも無いが、当馬のウインドインハーヘア全開もなかなか妙味があると言えるだろう。惜しむらくは、母スタセリタが抱えたドイツ系統の生かし方が弱い点だが、46という少ないクロス馬から外交的な配合ではあるものの、開花自体は晩成と言うほどには遅くなく、姉よりもシンプルな配合になっている点は言及しておきたい。本質的には芝向きの中距離タイプで、ダートは不適。距離延長に対する適性は比較的高いと言える。

タニノミッション(Invincible Spirit×ウオッカ by タニノギムレット)牝・16生

Ⅰ 主:7 結:5 土:4 弱:2 影:2 集:5 質:4 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(40/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I 〇 C △ L ×
ダ:S □ M 〇 I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:低め 成長型:遅め

 主導はNever Bendの系列クロス。次いで、My Babu。My BabuはDjbelによって結合を果たし、芝向きのスピードを補給している。また、前面でクロスした、Turn-toはNearcoを通じ切れ味を補給。母ウオッカ(3B)内において、一定の役割を果たしていた、Hyperionの結合の弱さは残るものの、Owen Tudorが7代目からクロスした事によって辛うじて結合したのは幸運な形態だと言えるか。惜しむらくは、中距離向きのスタミナを表現するPrincequilloは9代目までにおいて未結合である点や、母の血統内で一定の役割を果たしていた、Teddy系の結合の弱さは、端的にこの配合の限界点や母の繁殖牝馬としての難しさを表していると言える。しかしながら、Pharos=Fairwayが20連で形成する土台構造からくる、血の流れの良さはかなりのもので、この部分は当馬の大きな魅力だと言える。やや重厚な配合であるために開花まで時間はかかるだろうが、開花後の安定化のある血統だと言えるだろう。母よりは、ややスピードタイプの芝向きマイラータイプ。

クラサーヴィツァ(ハーツクライ×メジロルバート by メジロライアン)牝・16生

Ⅰ 主:7 結:7 土:3 弱:2 影:2 集:6 質:3 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(42/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇 
Ⅲ 距離適性
芝:S △ M 〇 I 〇 C □ L ×
ダ:S △ M 〇 I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:〇 成長型:早め 

 主導は、Northern Dancerを伴うLypard4×4の系列クロス。次いでAlmahmoud、Khaled。前面においてややクロスが多いものの、これらのクロスは主導内のクロスや、強固に結合するクロスでこの主導は有効。主導にNorthern Dancer系を用いた場合において、本来結合しにくいPrince Rose系のクロスであるが、Prince Chevalierが7×6とクロスし、主導内のLady Angela内のAbbots Traceを通じそのスタミナをしっかりと補給できたのは非常に妙味があると言える。血統的な質が低いノーザンテーストではあるが、当馬の配合においてそのスピードを再現するだけでなく、この結合のアシストが大きな役割を果たしていると言って良い。また、この配合の最大の見どころは、母母であるメジロラモーヌ(3B)内に血を集合させ、そのスピードを再現し全開した点にある。メジロラモーヌの血統構成は強力なスピード勢力であるTetratema~The Tetrachをクロスし、母方Khaledを強調した点に妙味があったが、当馬の血統構成はこれを良く再現している。惜しむらくはTeddy系の結合の弱さが見える点だが、全体的にはかなり良くできた配合で、BMSメジロライアンの血も良く生きており、古き良きメジロの血の生かし方に好感が持てる。本質は10F前後に向く芝向き中距離タイプ。

ラヴズオンリーユー(ディープインパクト×ラヴズオンリーミー by Storm Cat)牝・16生

Ⅰ 主:8 結:7 土:2 弱:2 影:2 集:4 質:4 再:4 SP:4 ST:3 特:0
合計:(40/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□ 
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I 〇 C □ L ×
ダ:S □ M 〇 I □ C △ L ×
芝適性:〇 ダート適性:〇 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:〇 成長型:□ 


 主導はNorthern Dancerを呼び水にした、父父内Almahmoudの系列クロス。父とBMSが同じキズナ(1A)と同じように、Somethingroyal~Princequilloをクロスさせスタミナの核とした配合だが、母母内の違いから、キズナ程のスタミナや血統構成の良さは無い。しかしながら、その母母内のアシストが悪いわけでは無く、Mr.Prospector~Raise a Nativeのスピード源であるものの、質が高いとは言えないNasrullahをクロスさせずに、父内Royal Chargerとの呼応で引き出し、主導たるAlmahmoudへとしっかりと結合させた為、当馬の距離適性は10F前後を得意とするマイル~中距離タイプになった。惜しむらくは、土台構造の弱さや血の集合の散漫さだが、強調されたSrorm Cat内へひとまずの血の集合は見られる。この配合の最大の見どころは主導のAlmahmoud内の生かし方で、当馬の血統構成上、主張こそ弱いものの一定の役割を果たしている、Fair Play、Broomstick等の米系をしっかりと取り込んでいる点や、Sir Gallahad等のTeddy系もSpeamintを介し直接結合している点に良さがある。したがって当馬の主導のAlmahmoudの能力はややスタミナに良さがあるタイプへと能力変換を起こしていると考えて良い。父内の欧州系のスタミナを生かせなかった為に、クラシックディスタンスの克服はやや厳しいタイプだと考えられるが、全体的には良くできた血統構成だと言える。

フィリアプーラ(ハービンジャー×プリンセスカメリア by サンデーサイレンス)牝・16生

Ⅰ 主:6 結:5 土:3 弱:1 影:3 集:6 質:3 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(38/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:〇 成長力:□
Ⅲ 距離適性
芝:S □ M 〇 I 〇 C △ L ×
ダ:S □ M 〇 I □ C × L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅳ 開花率:□ 成長型:早め

 主導は、父の傾向を引き継ぎNorthern Dancer5・5・6・7×5の系列クロス。Northern Dancer内のAlmahmoudがBMSサンデーサイレンス内において、5代目でクロスした為に、その明確性にやや影を落としたのが惜しまれる。できる事なら、母内Northern Dancerが4代目でクロスした方が良ったとは言える。また、BMS内Hail to Reason~Turn-toが世代ズレを起こし、Teddy系や影響が非常に弱いもののMan o’War、Blue Larkspurを取り込めなかったのが惜しまれる。この世代ズレに付随して弱点を父方内に2か所抱えたのも全体的な世代の問題から生じている点も、当馬の血統構成を考える上で致命的では無いものの、無視できない問題ではある。しかしながら、当馬の血統構成上の魅力は母母である、ラトラヴィアータ(サクラバクシンオー全妹 1A)を全開にした点や、BMSサンデーサイレンスの抱えるスピードも引き出している点である(父ハービンジャー 母父サンデーサイレンスは世代の問題を残すもののスピードの引き出しに良さが出る)。従って、同父産駒の中ではかなりスピードに良さがあるタイプで、血統全体においてBay Ronaldの流れを汲むHyperionが強く、同様に強いParos系の血の流れもしっかりと主導内へ取り込んだのが最大の長所。父のイメージ程に距離延長に対する適性は欠けると予想されるが、44という少ないクロス馬からくる、切れ味や反応の良さは見込めるか。本質は芝向きのマイルタイプで、ノーザンテーストの影響から重はこなす可能性を秘める。

アクアミラビリス(ヴィクトワールピサ×アクアリング by Anabaa)牝・16生

Ⅰ 主:6 結:5 土:3 弱:3 影:3 集:4 質:4 再:5 SP:4 ST:4 特:1(主導牝馬クロス)
合計:(41+1/60)点 クラス:3B
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇
Ⅲ 距離適性
芝:S × M □ I 〇 C 〇 L △
ダ:S × M □ I □ C △ L ×
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅳ 開花率:□ 成長型:遅め

 クイーンズリング(3B)半妹。主導はNatalma6×5・7の系列クロス。その母Almahmoudを血統の4ブロックに存在させ非常に明確に見えるものの、5代目に存在するNatalmaでは、欧米系の混在する当馬の血統を明確にリードするに至らなかったのが惜しまれ、この部分では姉に劣る(姉は5代目Almahamoud主導。Spearmintを介し米系の血を上手く取り込んだ。特にBanish Fearを介しての米系の連動に妙味がある)。しかしながら、当馬は母母シーリング内の欧州系のスタミナ要素であるSicambreを系列クロスにし、9代目Rabeleisを介しWild Riskと連動。そのWild Risk内Blandfordを通じ、主導たるNalalmaと連動させた点は現代的な血統ではなかなか見られない部分で、ハイハット内Hyperionと並び、当馬のスタミナの核として機能している。また、スピードはNasrullah、Turn-toから補給し、スピード・スタミナに関してはかなり優秀なレベルにあると言えるだろう。Teddy系やTourbillon系またはMan’o WarやBlue Larkspurなどの欧米系の結合の弱さから見て(9代目までは未結合。10代目において米系は結合を果たす。当馬は、近年珍しい5代アウトクロスの完全異系交配であり、10代目で結合を果たしたとしても不思議は無い。この評価は結合を9代目で切っているが、10代目を追った場合、もうワンランク上の評価もありえる)、ゆっくりと成長し、競馬ぶりもややもどかしいタイプになると予測されるが、全体的な血統レベルは優秀。また、本質的には芝の10F以上での走りを見てみたい配合である。


 本日はこのあたりで筆を置きたいと思います。


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