血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

種牡馬考察 キズナ

2018-09-09 00:10:08 | 種牡馬考察
種牡馬考察 キズナ

今回の血統徒然草は、2013年の日本ダービー馬キズナの種牡馬としての可能性を簡単に考察してみたいと思います。

 まず、キズナ自身の血統評価ですが自己診断で以下の様に判断しています(以前の診断項目とは異なり、新項目を用いての評価になります。従ってやや評価が異なっています)。

Ⅰ 主:6 結:8 土:4 弱:2 影:2 集:4 質:3 再:5 SP:4 ST:4 特:0
合計:(43/60)点 クラス:1A 
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:〇 芝:8~12F(10) ダ:8~11F(9)
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:□
Ⅲ 開花率:△ 成長型:普通 距離短縮適性:□ 距離延適性:〇

 主導はNorthern Dancer5×4の中間断絶を呼び水にした、Almahmoud5×6・7及び、DonatelloⅡ6×5の系列クロス。実質的にはNorthern Dancerがひとまず主導と考えてよい。従って決して明瞭では無く、結果的に強調された母母Pacfic Princess内はDonatelloⅡの主張が強く、その意味でもやや評価を下げざるをえない。しかしながら、血統内の血を集めているNorthern DancerがAlmahmoudを内包していること。次に影響の強いDonatelloⅡも、その父Blenheimを通じてその傘下に収まったのは幸運。また本来結合しにくいSomethingroyalも母内のNorthern Dancerが4代目に存在するため、9代目Polymelusで直接結合を果たしているのは、非常に幸運だと考えてよい(この部分は父ディープインパクト、母父にStorm catを配すると自動的に作成される形態で、この2頭の相性の良さの根源だと言えます。しかしながら、位置的な問題まで考えると決してバランスが良いとは言えず、個人的には一定の相性の良さを認めるものの、ニックスまでとは言えないと思います)。
 結合面においては6代目までにおける影響の強いクロスはSun Againを除き、実質的主導のNorthern Dancerへと直接結合を果たし、Sun AgainもSir Gallahad内Spearmintを通じAlmahmoudと連動を果たしている。7代目以降におけるMan o’WarやBlue Larkspurに代表される米系の取り込みが弱いものの前面に配されたクロスの連動性は高いと考えて良い。
 スピード・スタミナ勢力においては非常に強靭で、スピードは主導たるAlmahmoudを中核にPharamond(=Sickle)。スタミナ勢力はさらに強靭で、DonatelloⅡ・Aurora~Hyperion・Somthingroyal~Pincequilloと非常に隙が少ない。惜しむらくは、父の決め手の源となったと考えられるTurn-toや、スタミナ勢力となりうるCourt Martialの欠落だが、全体的には妙味のある血統構成で開花率が高いとは言えないものの、底力のある芝向き中~長距離タイプ。

 この血統を踏まえて、キズナが種牡馬となった際に、どのようなタイプの種牡馬になるか考察を行いたいと思います。

①  自身の主導はNorthern Dancerを呼び水にしたAlmahoudだが、現代の繁殖牝馬プールを考慮すると、その継続は比較的たやすい。しかしながら、そのままNorthern Dancerを継続した場合、結合の弱さを招きやすく、血が濃くなるマイナスを考慮しても、その子LyphardもしくはStorm Birdを使う事も念頭においた方が良い。ただし位置の関係においてLyphardを用いる場合はStorm cat内Northern Dancerの影響が強くなるのはマイナスで、母となる繁殖牝馬内においてLyphardの位置(できるならば母内3代目に配し母方を強調する構成を作る)を考慮する必要がある。
②  Northern Dancerを主導に据えた場合において、血の濃さのマイナスを回避できるものの、結合面の弱さを解消する必要がある。その際において父内Hail to Reasonの単一クロスを利用したい。間接的な結合になるものの、父キズナ自身のウィークポイントの一つでもあった米系のMan’o War・Blue Larkspur・Sir Gallahad等を取り込む事ができるのは、血統が1世代進むキズナ産駒において、有用なクロスだと考えられる。
③  前面において主導となりやすい血は、前述したNorthern Dancer・Alzao~Lypard・Storm cat~Storm Birdの他は、サンデーサイレンス~Halo~Hail to Reason、Secretariat~Bold Ruler、Acropolis~DonatelloⅡだと考えられるが、自身の傾向を引き継ぐ意味や抱えた血の内容からSecretariat~Bold Rulerの影響を強くするのはあまり得策とは言えない。またサンデーサイレンス~Haloクロスも当馬の血統において眠ったままの血であるため、傾向を引き継げないのは考慮した方が良い。Acropolis~DonatelloⅡの血を使うのは決して悪くないものの、米系の結合の弱さが残る点とスタミナ優位の構成になりやすく、相当のスピードの援護を考える必要がある(質や傾向の引き継ぎの意味において、決してマイナスでは無いものの勝ち上がりにさえ苦労するタイプになると想定される)。
④  前述したように、キズナの血統構成は、欧米系が入り混じった血統構成である。割合として6:4程度と、非常に現代的な血統構成をしていると言えるものの、この血の散漫さを解消する必要は、上位レベルの配合を望むのなら必要である。具体的には、米系のMan’o War・Blue Larkspur・Sir Gallahad(=Bull Dog)だけでなく、仏系のKsar・Court Martial(Hurry On)をクロスさせ前面で作る主導へと結合させる必要がある。
⑤  忠実に自身の再現を試みた場合、スタミナ優位の血統構成になると考えられるが、これをサポートするスピードの血を主導勢力と連動させる必要がある。自身はPharamond(=Sickle)のアシスト(希代のスピード馬サイレンススズカの主導)によりスタミナ優位の血統でありながらスピードも兼備した血統構成を作り出したが、この部分を再度再現する必要がある。
⑥  スタミナの再現の為に、自身の血統内において主張が強かったDonatelloⅡ・Aurora~Hyperionの再利用を考える事が好ましく、主導となりやすいNorthern Dancerとの連動の強固さを考えても、このスタミナ源を使う事が理想的。
⑦  自身において散漫であった血の集合や主導勢力の明確性を解消する為に、産駒の4代目程度に主導を配する事が望ましい。これはキズナ自身の血統で解消する事は非常に難しく、上位レベルを望むのであれば、ある程度母を選ぶ種牡馬であると言える。
⑧  主導勢力の部分でも述べたが、自身の血統構成を考えた場合、国内に浸透したサンデーサイレンスクロスや、ブライアンズタイムによるHail to Reasonを主導、もしくは強い影響を持たせる事は決して好ましいとは言えない(サンデーサイレンスのクロスを作り、該当の血統内において5代目以内に余分なクロスを作らなければ、可能性はあるものの極めて稀だと考えられる。Haloクロスに血を集合させたヴィクトワールピサの様な血統)。
⑨  国内外において想定されるBMSとの相性として、良好な部類に入ると言えるのは(あくまでも父とBMSまでの相性ですので、当該の配合を見たとしても母母内の血によって当然異なります)、Sadler’s Wellsに血を集合させやすいGalileoやMontjeu。ハービンジャー等のNorthern Dancerを系列クロスにできるデインヒル系(ただし、ハービンジャー牝馬を母に配した場合、Lyphardの位置の悪さとCrepelloのクロスによる日本適性の低下に注意が必要)。また同じデインヒル系であるRedoute’s Choiceは相性がかなり良好(BMSに配された場合は芝向きの血統を作りながらSomthingroyal~Pincequilloを再利用できる)。
逆に相性が万全とは言えないBMSとしては、血の再現としては悪くないものの主導や血の集合が不明瞭になりやすいキングカメハメハ。Bold Rulerが主導となり、産駒がダート向きとなりやすいフレンチデピュティ。ある程度の相性はあるものの、Hail to Reasonが自動的にTurn-toを伴う為、主導が不明瞭となりやすく産駒がダート向きになりやすい、ブライアンズタイムやクロフネ(クロフネ牝馬としてリュシオルは比較的相性が良いが、母母の血が良い為でクロフネとの相性の良さがあるわけではない)。Hail to Reasonが系列クロスを形成するものの、自身に強いHyperion・Blandford系の取り込みが非常に弱くなるシンボリクリスエス。Northern Dancerが系列クロスを形成するものの前面でサンデーサイレンスクロスが作成され、血の集合が不明瞭になるアドマイヤムーン。Haloを呼び水にする形態を作れるものの血の集合や再限度に不満がのこるMachiavellianやバゴ。ただ、この相性が万全と言えないBMSを持つ繁殖牝馬でも、スピードの引き出しに良さがあるタイプや、ダート向きになるものの迫力の出せる牝馬は確かに存在し、あくまでも祖父母4頭の相性を見るべきではあるだろう。

 かなり大雑把な考察ではありますが、種牡馬キズナの課題や可能性を血統面からいくつかあげてみました。多分に難しい部分を持つ種牡馬ではあるものの、キズナ自身がそうであったように、スタミナ優位の血統構成を作れる、国内において非常に珍しいステイヤーを出せる種牡馬であると考えています。
そこで、現実に配合された17年産の産駒を見てみたところ、これは…というような配合は非常に少ない印象を受けました(すべて見た訳では無いので見落としはあるかと思います)。また、その産駒群においてざっと見た限り、ややスピードに欠ける産駒が多く見うけられ、初年度産駒は苦戦するかもしれません。
 そこで、父キズナとしてのこうした配合ならと思える仮想配合を記載しておきます。

(キズナ×メイビー-Galileo)-・-生

Ⅰ 主:8 結:7 土:3 弱:2 影:3 集:6 質:5 再:5 SP:4 ST:5 特:0
合計:(48/60)点 クラス:1A 
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:◎ 芝:9~15F(11) ダ:8~12F(10)
芝適性:〇 ダート適性:□ 重馬場適性:〇
Ⅲ 開花率:△ 成長型:普通 距離短縮適性:△ 距離延適性:〇

 主導は父母の傾向を引き継ぎNorthern Dancerの系列クロス。父母の血の再現も比較的良好で、6代目までに存在するクロスの連動性も高い。母は2018年英2000ギニー馬Saxon Warrior(3B)の母として国内でも有名だが、キズナとの配合においては、よりスタミナ優位の欧州向きの配合となっている。また父内Pacific Princessにあるスタミナの血の再現は、シャドーロールの怪物と言われた三冠馬ナリタブライアンを彷彿とさせる。スタミナ優位の中~長距離タイプ。

(キズナ×ラトーナ-)-・-生

Ⅰ 主:7 結:9 土:3 弱:2 影:3 集:4 質:5 再:5 SP:4 ST:4 特:0
合計:(46/60)点 クラス:1A 
Ⅱ 日本適性:△ 成長力:〇 芝:8~12F(10) ダ:8~11F(9)
芝適性:〇 ダート適性:△ 重馬場適性:□
Ⅲ 開花率:□ 成長型:遅め 距離短縮適性:△ 距離延適性:〇

 主導は、父母の傾向を引き継ぎ、Northern Dancerの系列クロス。この配合は前面のクロスすべてがBlandford系の血の流れを持ち、スムーズに主導へと血の流れを維持したのが最大の長所。従ってスタミナ優位の配合でありながら、ある程度の反応の良さや開花率の良さが見込める血統構成だと言える。惜しむらくは血の集合が散漫になった点で、開花まではある程度の時間や鍛錬を要すると予測される点か。

(キズナ×リュシオル-クロフネ)-・-生

Ⅰ 主:8 結:6 土:4 弱:2 影:2 集:5 質:3 再:5 SP:4 ST:3 特:0
合計:(42/60)点 クラス:3B 
Ⅱ 日本適性:□ 成長力:□ 芝:7~10F(9) ダ:6~9F(8)
芝適性:□ ダート適性:〇 重馬場適性:〇
Ⅲ 開花率:□ 成長型:普通 距離短縮適性:〇 距離延適性:□

 主導は母内Northern Dancerの系列クロス。次いでHail to Reason・Bold Ruler。主導により圧倒的に母母を強調し、同牝系のヒシアマゾンと同様そのスピードを再現。父のスタミナ勢力の再現は非常に弱く、父の傾向を引き継いだとは言えないものの、芝ダート兼用のスピード型配合と言える。

 かなり簡単な考察ではありますが、個人的に好きなタイプの血統構成をしている種牡馬で、ぜひとも後継を出して欲しいと、願ってやまないキズナの種牡馬としての考察をおこなってみました。失礼な文面や相変わらずの乱筆乱文をどうかご容赦ください。今回の血統徒然草はこのあたりで筆を置きたいと思います


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