つむじ風

世の中のこと、あれこれ。
見たこと、聞いたこと、思ったこと。

2018年09月28日 19時45分13秒 | Review

横山秀夫/徳間文庫

 2005年4月15日初版、2015年6月20日第25刷。著者には「第三の時効」「64」「陰の季節」「動機」などで既にお目にかかっており、安心して読める。
D県警本部鑑識課(似顔絵書き)出身の巡査、主人公の平野瑞穂が悪戦苦闘しながら「似顔絵書き」をきっかけに事件に関わるという作品群、一話毎に短編風にまとめられている。

・魔女狩り
・訣別の春
・疑惑のデッサン
・共犯者
・心の銃口

 いずれも主人公の特技「似顔絵書き」に関わって話が展開する。鑑識課から広報室、電話相談室、捜査一課とめまぐるしく職場を異動する。いずれの話しも新鮮で面白い。話のはこびに無理のないところがいい。それぞれのEndingが何とも泣けるではないか。丁寧に作られており完成度が高い。
 解説者が言うように、主人公に対して、読者に「主役でなくてもいいから、頑張っている彼女の姿を、もう一度見てみたいものである」という感情を抱かせるに充分な作品群だった。
「見たい」、そう、目に見えるのだ、正義感、真実への渇望、この二つが。

 数は少ないが女性が主人公の警察モノが最近時々お目にかかる。「朽ちないサクラ」の森口 泉、「警視庁鑑識課」シリーズの松原 唯、ちょっと変わったところで「トツカン」の鈴宮深樹など、バリバリの最前線(捜査一課)などではなく、ちょっと脇のところで冷静に事の成り行きを見つめる第三者の目線とでも言えばいいのだろうか、女性特有の真面目さと継続的な努力の積み上げによって、華々しい(嘘っぽい)活躍のウラに隠された現実が見えてくる。


コメント
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