金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

AIJの問題、一つの原因は日本の年金のヘッジファンド傾斜か

2012年03月13日 | 投資

日本のマスコミを賑わしたAIJスキャンダルに関するニュースについては、不思議なほど欧米のマスコミが取り上げていない。その理由はよく分からないが、恐らく似たようなそしてはるかに規模の大きなスキャンダル(例えば米国のマドフ事件)があり、さして話題性がないのではないかと思われる。

ただ共通性の多い金融詐欺事件だが、今日の日経新聞(「一目均衡」)が、指摘しているように大きな違いが一つある。それはマドフ事件では被害者が富裕層中心で他のファンドを介した間接投資が多かったのに比べAIJ事件では大部分は脆弱な企業年金が直接投資をして被害に巻き込まれた点だ。

このことは日本の企業年金における資産運用における二つの問題を浮き彫りにしている。一つは年金基金は「資産運用のプロ」であることを期待されながら、実際はまったくの素人に過ぎなかったことと、年金資金の代替運用におけるヘッジファンドの比率の高さである。

「資産運用のプロ」といったが、何も難しい金融工学的な知識が求められる訳ではなく「一般の運用環境が悪い中、どのような手法でコンスタントに高い利回りが上げられるのか?その仕組みを分かりやすく説明してくれ」といった基本的な疑問を呈することであると私は考えている。

資産運用にはモデルというか哲学というものがあり、それがその時々の局面で運用成果につながっていく。そして時に予想以上のパフォーマンスを上げ時には予想したパフォーマンスを上げられないこともある。その場合は何故そうなったか?という説明を求め、運用プロセスに納得できれば資金運用の委託を続け、納得できなければ解約をする・・・というのがプロというものであろう。

さて企業年金連合会の資産運用実態調査を見ると、09年度のヘッジファンドの運用比率は4.69%(前年は5.72%)で、その他(不動産・プライベートエクイティ等)3.16%(3.32%)を大きく上回っている。

これは米国の年金基金の資産運用と相当異なる点で、例えばカリフォルニア州職員退職年金基金の場合は、プライベートエクイティが14%でヘッジファンドでの運用は2%に過ぎない。

私は年金基金の資産運用担当者にとってプライベートエクイティ投資はヘッジファンド投資に較べてはるかに理解しやすい投資だ、と考えている。そして年金基金のように非常に長いライアビリティを持つ資金の場合、短期の流動性をギブアップして高いリターンを追及するというプライベートエクイティは理にかなった投資ではないか?と考えている。

ただ日本のプライベートエクイティの市場は小さく、多くの年金基金が投資を求める場合、玉が不足してしまうという問題があるのだが・・・・・

年金基金だけでなくプライベートエクイティの組成者や企業、金融機関等が力を合わせてこの市場の拡大に努めることで、年金のリターンを改善することやブラックボックス化しやすいヘッジファンドへの過度の依存を是正することができると思うのだがいかがだろうか?

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米国の労働市場はまだメチャクチャ~スティングリッツ教授

2012年03月13日 | 社会・経済

FTにノーベル経済省学者のジョセフ・スティングリッツ教授がThe US labour market is still a shamblesという寄稿を行なっていた。Shambleは「ヨチヨチ歩き」という意味だが、複数形だとメチャクチャという意味なので、ここではメチャクチャと解した。

先週金曜日に発表された非農業部門雇用者増は22.5万人だったが、労働人口増を考えると真水の増加は10万人であり、このペースの雇用増を150ヶ月(13年)続けないと完全雇用に戻らないというのが、スティングリッツ教授の主張だ。

また同教授は「大恐慌が農業から製造業への産業構造転換という側面を持っていたように、今回の大不況は製造業からサービスセクター経済への構造転換という側面を持っている。生産性の伸びと比較優位性の変化は、製造業の従業員減少を避けがたいものにしている。だがこの構造変化に対策が打たれていない」と主張する。

同教授は今米国は3つのリスク~「過度の緊縮財政とユーロ危機から来る欧州の厳しい景気後退」「米国経済は政府のサポートがなくても直ぐに回復するという自己満足」「7%以上の失業率を受け入れることは避けられないという合意」~に直面していると述べ、景気刺激策を削減することに強い警鐘を鳴らしていた。

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