金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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中国、7.5%成長で住宅問題は方がつくのか?

2012年03月06日 | 国際・政治

昨日中国の温家宝首相は、全国人民代表大会で2012年の経済成長目標を昨年までの8%から7.5%に引き下げると表明した。インフレや不動産バブルにつながる高度成長路線を改め持続可能な成長に軸足を移すためだ。

だが中国の住宅バブルの状況を考えると、7.5%へのスローダウン程度で中国の住宅問題が解決するのかどうか心もとない感じがする。

ニューヨークタイムズによると、広州中心部の93平米(1千sf)のアパートの値段は30万ドル相当で大学新卒者の年収の約50倍である。

日本の首都圏のマンション価格と年収の関係を見ると、年収が804万円でマンション価格が4,535万円で年収の5.6倍になっている。大卒新卒者の年収を3百万円とすると約15倍になる。日本の不動産価格も安くはないが、中国の住宅価格がいかに高いが分かる。

中国政府は経済運営のポイントとして「低価格住宅の整備」に690億元(約9千億円)を投じると報じているが、国民は市場価格の半分以下と想定される物件を買うためには政治的なコネクションが必要かどうか不信感を持っている。

過去中国では投資が国の支出の半分を牽引してきた。IMFは向こう4年間は中国のこの傾向は大きく変わらないと予想している。

目先中国の不動産価格は下落している。広州では過去1年間に2割下落した。一方賃金については中国政府の5年計画は年間13%の上昇を見込んでいる。仮に13%の給与アップが5年続くと給料は1.8倍になる。また不動産価格が年間1割の下落を続けるとすると、5年後の不動産価格は6割になる。この時中国の大卒者は日本並の倍率(16.6倍)でアパートを購入することができるという計算だ。

だが現実には今の中国で十分な給与が払われる仕事を見つけることは相当困難で欧州向けの輸出が停滞していることを考えると年間13%の賃金上昇は困難だろう。

中国の住宅事情が安定するには極めて困難なパスをたどる必要があると言わざるを得ない。

コメント (1)
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