米国の大統領選が視野の中に入ってきた。目下のところ国民の最大の関心事は、経済全般と雇用の問題で、健康保険に関する関心はそれ程高くはない。しかし健康保険法に関する意見は真っ二つに分かれている。
2月末のギャラップ調査を見ると「共和党から大統領が選ばれた場合、同法案の廃止を支持するかどうか?」という質問に対し、全国民の47%が廃案を支持し、44%が廃案に反対している。共和党の87%は廃案支持で、民主党の78%は廃案反対である。
次に米国人は国民皆保険法が完全に実施されたら(現在のところ極一部の法律が効力を発効した過ぎない)彼等の家族にどのような影響が予想されるか?という質問に対しては、24%の人が「良くなる」と答え38%の人が「悪くなる」と答え、34%の人は変わりはないと予想している。法案を支持する民主党員でも良くなると答えた人は40%で、43%の人は変わりなしと答え、12%の人は悪くなると答えている。
米国人の半分が、皆保険の導入に反対することの説明として「金持ちが保険に入れない人のために負担を増やすのを嫌がっている」というような説明があるが、米国人の半分が金持ちという訳ではないから、この説明は余り良い説明ではないだろう。
むしろ私は米国民は、今後の深刻な医師不足を予想していて、国民皆保険が国民の受療率を押し上げ、全体として医療サービスが低下することを懸念している部分が大きいと考えている。
「日本については皆保険の結果、誰でも安いコストで均一の医療サービスが受けられる」というのが一般の理解だが、最近の私の入院経験を踏まえると若干のコメントを加えたくなる。
まず私が入院した地元の前頭クラスの「総合病院」では、医師の数が決定的に不足している。担当医の先生は朝早くから、入院患者の世話と外来患者の検診に追いまくられ、お気の毒である。また外来患者はほぼ半日かけて、通院し受療する。この患者が耐えている時間を合計すると膨大なコストになると思うのだが・・・・(もっとも高齢者の人が多く、機会コストは小さいかもしれないが)。
このまま日本も高齢化が更に進むと、医療問題は深刻化するだろう。米国人の半分が何故国民皆保険に反対するのか?ということを一度考えるのも悪くはないかもしれないと思った次第だ。今回はほとんど自分の考察を加えていないが、その内もう少し考え方をまとめてみたいと思う。