佐藤直曉の「リーダーの人間行動学」 blog

リーダー育成のための人間行動と人間心理の解説、組織行動に関するトピック

手強い交渉相手

2009-11-18 10:30:25 | リーダーの人間行動学
蓮舫議員が「国立女性教育会館」の理事長さんを問い詰める一幕)は、アメリカの法廷ドラマ(←ただし低予算)みたいだったそうじゃないですか。

私はテレビのニュースでちょこっと見ただけですが、やっぱりすごいなあ、と。日経ビジネスに記事が出ていました。


「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明2009年11月16日 蓮舫議員と語り合いたい「もったいない」の意味」



1.蓮舫議員の声の「張り」:あのトーンは「ひざまずいて私の靴をお舐め!」の声だ。ああいう声の人間に問い詰められると、普通の人間はそれだけで心が折れる。新入社員の3割ぐらいは、たぶん泣く。

2.対話の間:「あります」の語尾がまだ発声し終わらないうちに、「稼働率は?」と、次の質問が畳みかけられている。このおっかぶせるタイミングでの問いかけは、質問者が回答者の返答を聴いていないことを意味している。つまり、両者のやりとりは「対話」であるよりは「尋問」であり、それ以前にいじめに近いということだ。あるいは、この事業仕分けというイベントの主旨は一種の公開処刑であるのかもしれない。

3.発言後の蓮舫議員の表情:関西の人たちが言う、いわゆる「どや顔」だと思う。「どうだ。恐れ入ったか?」というキメの表情。たとえば、印籠を出す時の格さんの表情。遠山金四郎の桜吹雪一件落着顔。土下座で受け止めるほかに対応のしようがない。歌舞伎の大見得にも通じる一種の勝利宣言なのだと思う。

4.仕草:蓮舫議員は、ボディーアクションの大きい語り手でもある。左右対称に動くことの多い両手と、左右に回転する首は、着ぐるみの中の役者の演技に似ている。「猿の惑星」のコーネリアスの会話法がまさにそれだった。手話というより体話。言葉を後押しする肉体言語。これらのアクションは、議員の言葉に言語化不能なニュアンスを付加している。

5.歯:ツブの揃った過剰に白い歯並び。差し歯であろうか。谷崎潤一郎が「陰翳礼賛」の中で「便所のタイルみたいな」と形容した、一点のカゲリもないアメリカンビューティーのこれ見よがしの歯。口ごもることを嫌い、言いよどむことを恥辱と考える人々による、正面からの直言。その舌鋒を支える城壁としての前歯。

実に言い得て妙ですな。「ツブの揃った過剰に白い歯並び」なんて、小説に使えそうだ。勉強になります。

ぎすぎすした蓮舫議員のご様子、私のような気の弱い男では、とてもおつきあいしたいとは思えませんが、仕事はたいへんご立派です。こういう人でないと、予算をばさばさ切る“首刈り人”の仕事はできないでしょう。まさに適材でしょう。

こういう血も涙もない冷酷非情に見える人は、たぶん5種なんでしょう。織田信長と同じタイプです。

ほんとうは感情家なのですが、それをじっとこらえて、極めて冷静に仕事を進めていけるタイプです。いまの時期には必要な人です。

こういう人には、いくら情で訴えても納得してはもらえません。“対戦相手”の方は理よりは情タイプの女性のようにお見うけましたから、とても勝負にはならなかったのではないでしょうか。

とにかく、蓮舫議員のような人を説得するには、理か勘定が必要。これだけ効果が出るとか、これだけ節約できるとかですね。嘘でもいいから、そういう数字を前もって用意しておけばよかった。そうすると、案外ころりと騙されることもある……かな。

数字なんて、どうにでもなりますからね。予測の傾きを1ミリあげるだけで、成長率なんかぐっと変わるし、売り上げ予測だって変わるでしょう。みなさんもふだん上司にそうやってるでしょう?

え、していない? 私だけかな。

チャートなんて、自分の意見を正当化するための道具であって、事態を正しく判断するものなんかじゃないんです。

その証拠に、国土交通省のダム・水需要とか道路・交通量予測なんかでたらめじゃないですか。要は、相手に「まあ、いいか」と思わせられればいいだけのこと。相手も説得されたいと思っていたら、特に有効。

こんなことを言うと、純真な若い世代は傷つくかな。いや、みなよく知っていますよね。

それにしても、厚生労働省の動きはおもしろかった。なんの予算だったか忘れましたが、カットされるかもしれない数百億円の予算について、自分から数億円減額して提出してきました。

少しは反省しています、というポーズなんでしょうかね。なんだか、税務調査で、調査員に「おみやげ」をもたせるような感覚に思えましたよ。

「おみやげ」を知っていますか。

税務署の方は「これは経費にならない」と言い、調査される方は「いや経費だ」と言いはっていると、いつまでも平行線。せっかく税務調査に来たのに手ぶらで帰すのでは調査員も面子丸つぶれですから、そこで落としどころを用意しておく。これを「おみやげ」と言う。

厚労省の役人は、おみやげのつもりで数億円包んできたのかもしれません。いやはや、たいした感覚です。しかし、この程度のつかみ金では、仕置き人、じゃなかった、仕分け人は動かされないだろうなあ。けちったらいけません。

けちる、けちらない、の問題じゃない? そうでした、そうでした。


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