S嬢のPC日記

2004年から2007年まで更新を続けていました。
現在ははてなで活動しています。

「障害」という事実を受け入れるということ

2005年01月13日 | たったひとつのたからもの
「あなたの赤ちゃんはダウン症です」
こう言われてから歩む道は、親によって本当に人それぞれだと思う。
合併症により命の危険があるときは、「命先行」になって、障害に関しての衝撃が後回しになることも多い。
後回しになっているうちに、親子の関係の結びつきが強化されて、「事実を乗り越えられる親」になっていることも多い。
医療との行き来で忙しく、その忙しい日々をどうにかこなしているうちに、「事実を乗り越えられる親」にいつの間にかなっていたというケースも少なくない。
幸運にも、合併症というものの問題が少なかった子どもの両親の方が、精神的にきつい時間を送るという部分もある。

「自分が育てることで障害を軽くしてみせる」と情熱に燃える親もいる。
いろいろな努力をすること、し過ぎることの弊害自体もあるのだけれど、それでもそうやって「自分はこんな風に育てたい」という強固な意志で立ち向かっているうちに「障害を乗り越えられる親」になっている場合もある。
また、療育という世界の感覚に違和感を持ち、その違和感の正体を自分の中でさがしていくうちに「障害を乗り越えられる親」になっていることもある。

よく使われる言葉は「わたしは立ち直りました」とか、「立ち直りが早いかどうか」ということだと思う。
まあ、人の心や不安なんてものは、そんなに線引いて「ここまでが衝撃、ここからが立ち直り」なんて言えるものではなく、それなりに引きずりつつ進むものなのではないかとも思うのだけれど。

いろいろな人がいる中で、事実の受け入れというか、「ダウン症です」という告知後の価値観の建設というか、そういうことが長期にわたってできない人もいる。
妊娠期間の終了と共に始まった「事実」に対しての不安が、どうしても消しきれない。
運命というものに対しての「被害者」のような気持ちを、どうしても持ち続けてしまうのだと思う。
それは誰にも責めることはできないし、その人がその人の生きてきた人生から生まれた価値観の中で、必要に応じて少しずつ価値観の修正を加えながら、その人自身が少しずつ少しずつ、何かをつかんでいくことを望むことくらいしか、実は他人にはできることではない。
精神的にそばに付き添い、吐き出される「不安」に対しての「耳」になり、その人の「今」を肯定できるような部分を探す。
好機を見逃さずにつかんで、適切な情報をゆるやかに渡す。
その人に対しての否定は、その人自身が充分に行っているからこその「苦しさ」だと思えば、掘り起こす気にはなれない。

個人差の中で、本当に長い時間がかかる人がいる。
人によっての「必要な時間」の個人差は、子どもの発達の個人差か、またはそれ以上かもしれないとも思う。
それは、人間的優劣ではなく、個人差なのだとわたしは思いたい。
同じ障害を持った子どもの親でも、その人がその立場に立つまでの人生は全て人それぞれで、その中で、「障害との出会い」のたった数ヶ月から数年くらいで、人間の価値が決められるはずもないと思う。
人間というものは、紆余曲折しながらも、意識的無意識的関わらず「前に進みたいと思っている」ということを信じなければならないとも思う。

「不安」や「障害に対しての否定的な感情」を聞き続けると、ともすれば本人の「否定的な感情」に飲み込まれそうにもなる。
「否定的な感情」は、イコールでいえば、自分のところにいる我が子の障害に対しての「否定の姿勢」でもある。
こうした視線が、相手の意図にかかわらず我が子にも向けられていることを感じても、それでも耐えなければ、苦しむ相手には精神的に付き添えない。

関わる相手によって、大なり小なりとエネルギーに差はあるけれども、「なんでこんなに自分はこのことにつき合い続けるんだろう」という理由は、やっぱり「命への祝福」だと思う。
染色体異常の妊娠は、たいがいは胎児よりずっと前の胎芽の状態で流れていく運命。
それが立派にお腹の中で育ち続け、立派にこの世に「命」として誕生してきた結果、その子はそこにいる。

親の不安の「元」になっている、障害をもつ子ども。
がんばれよ、と思う。
アンタのパパやママも、がんばってる。
だからもうちょっと、もうちょっとだけ待っててくれよ、と思う。

だいじょうぶ。
今日、不安に苦しむあなたのパパやママも、きっと素直に笑ってる日が来るから。
そのことを信じましょうね。
信じ続けましょうね。

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2 コメント

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Unknown (S嬢)
2010-01-10 12:05:58
どうぞ、おだいじになさってください。

流産・死産経験者で作るポコズママの会
http://pocosmama.babymilk.jp/index.htm
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ファイト (にゃんたま)
2010-01-10 06:33:52
私なんて先日 本当に 大好きだった 私の子供を 流産しました (>_<) まだ 笑えず 今も毎日泣いています 絶対頑張れ!ファイト くよくよするな負けるな
その子をまっとうさせること
それがあなたのさだめだと思ってしっかりね!

応援してるよ!
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