「シリアからの難民約400万人の半数が暮らすトルコは国内外に政情不安の火種を抱える。その治安が混迷すれば、トルコ経由の難民流入が続く欧州を巻き込んだ混乱が拡大し、テロ組織の思うつぼになる。」「犯人の特定と犯行組織の解明を急ぎ、裁きを受けさせて世界ではびこるテロ行為根絶につなげたい。国際社会を挙げてテロに立ち向かう態勢を強化し、暴力の連鎖を断ち切らねばならない。」
暴力が暴力を呼ぶ連鎖を止めなければなりません。ブッシュ元政権が行ったイラクフセイン政権の武力攻撃に端を発し、政権転覆が中東諸国の内戦、暴力の連鎖、内政の混乱に拍車をかけています。その中で、アメリカが利用した宗派が宗教上の宗派対立を作り出し、暴力の連鎖が止められない事態に至っています。今回のトルコの自爆テロは、宗派対立と民族対立が相乗し、政治的な混乱を一層深刻にしています。
紛争を武力で対応することを止めない限り、テロ行為はなくなることはないことを示しています。紛争を解決するため、話し合いを原則とし、宗派、民族の違いを認めた上での共存を模索すべきです。また、混乱の根底にある貧困を解決するために、国際社会の支援を行わなければなりません。
<琉球新報社説>トルコ自爆テロ 解明急ぎ暴力の連鎖断て
和平実現を訴える1万人余が結集した集会はおびただしい血が流れる惨劇の場に一変した。許し難い卑劣なテロがまた起きた。
トルコの首都アンカラで起きた爆発による死者は11日現在で95人、負傷者は246人に達した。トルコ政府は実行犯2人の自爆テロとみている。死傷者は増えそうだ。
トルコ史上最悪のテロは同国社会を震撼(しんかん)させ、世界に怒りを広げた。シリアからの難民約400万人の半数が暮らすトルコは国内外に政情不安の火種を抱える。その治安が混迷すれば、トルコ経由の難民流入が続く欧州を巻き込んだ混乱が拡大し、テロ組織の思うつぼになる。
犯人の特定と犯行組織の解明を急ぎ、裁きを受けさせて世界ではびこるテロ行為根絶につなげたい。国際社会を挙げてテロに立ち向かう態勢を強化し、暴力の連鎖を断ち切らねばならない。
卑劣なテロは少数民族クルド人を支援し、政府と対立する非合法組織の和平を求める集会を標的に起きた。クルド人への攻撃が相次いでいたが、今回のテロを機に歯止めをかけられないトルコ政府に対する不信感が一層強まっている。
クルド人はトルコ、シリア、イラク、イランにまたがる山岳地帯などに住む。1984年に武装闘争を始めた非合法組織クルド労働者党(PKK)とトルコ政府は対立した。2002年に発足した公正発展党(AKP)政権が融和路線に転じ、13年に停戦発表したPKKとの和解機運が高まっていた。
だが、シリア内戦を機に米国などと連携を強めたクルド人勢力の影響力が大きくなり、警戒感を強めたAKPと再び対立していた。
「テロ行為は人類に対する罪だ」と国民の連帯を呼び掛けたダウトオール首相が列挙した犯行が疑われる勢力は、過激派組織「イスラム国」、PKKなど4組織もある。敵対勢力は多い。
6月の総選挙でAKPが過半数を割り、クルド人系政党が躍進した。符節を合わせるように、トルコ政府は「イスラム国」とPKKへの掃討作戦を始めた。11月に予定される再選挙を経てもAKPなどによる安定政権の樹立は見通せず、政情不安が長期化する懸念が拭えない。
米ロなど世界各国の首脳がテロを非難している。トルコは親日国で知られる。国際協調の下、日本が実行し得るトルコ支援とテロ根絶の具体策を模索すべきだ。
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