日本経済が、閉塞しデフレから脱却できないのは、経済成長ができない、足りないからとする経団連、大手企業、自民党などの考え方は間違っています。そもそも経済成長は、多くの場合、新興国が主に政策課題対象とすべきものであり、アメリカ、日本などの先進工業国には当てはまらない。なぜならば、多国籍企業、製造業は人件費が安く、生産人口が多い国家に進出し、工場の立地、製造などを行います。したがって、ある程度の経済成長を実現した国家は、従来の経済成長率を維持しながら成長をし続けることなどは不可能です。その理由は、賃金が上昇し、安い人件費で製造ができないくなるからです。イギリス、アメリカ、日本の経済成長率を見れば、そのことはよくわかります。また、今後、中国などもそのような傾向に遭遇することとなるでしょう。
したがって、経済成長との関係で残業代ゼロ、労働法の規制緩和は、実質的には賃金の引き下げ、働き方のルールを破壊する以外の何物でもありません。非正規労働を導入した小泉・竹中の規制緩和が15年後の日本経済、政治をどのような悪化させたかをみれば彼らが意図していることをよく理解できます。今の日本経済の問題は、正規労働の減少、低収入、失業者の増加、生活保護家庭の激増で国内消費が極端に落ち込み、中小零細企業が倒産、廃業に追い込まれていることです。その結果、地方都市は人口減少、税収の減少で自治体機能を維持できない状況に追い込まれています。
<北海道新聞社説>「残業代ゼロ」案 過労防止の規制が先だ
厚生労働省は、事務職の一部を対象に労働時間規制の適用を除外し、時間ではなく成果で賃金を支払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」導入に向けた制度改革の骨子案を明らかにした。
「年収1075万円以上」の研究開発などの専門職が対象で、残業代は支払われない。政府は、これを盛り込んだ労働基準法改正案を通常国会に提出する方針だ。
過労を防ぐ明確な歯止めを欠いたまま、労働者の健康と生活を守る規制が緩和されることに危惧を覚えざるを得ない。労働団体が「残業代ゼロ」で際限なく働かされると反発するのも当然だ。
企業側はだらだらと残業する風土を変えたいと主張する。
しかし、実態は、人手不足から長時間労働を強いられ、チームワーク重視の職場で簡単には仕事を切り上げられないといったケースも多いのではないか。
そもそも短時間で成果を上げる働き方を禁じる法律などない。成果主義を導入している企業もあり、現行制度でも労使の創意工夫によって、柔軟で効率的な労働を実現するのは可能なはずだ。
労働規制緩和を成長戦略に位置付け、労基法に手を加えてまで「働き方改革」の旗を振る政府の姿勢は、企業寄りと批判されても仕方あるまい。
年収1千万円以上の給与所得者は管理職を含め、全体の4%程度にすぎない。年収要件に不満な経済界は、適用範囲を拡大するよう圧力を強めるだろう。
派遣労働のように、いったん制度が導入されれば、なし崩しに対象が広がる不安は消えない。
現に今回の改正案では、あらかじめ設定した時間だけ働いたとみなす裁量労働制の対象業務を拡大するとしている。
本人の同意が導入の前提だが、力関係を考えれば、社員が企業の要求を拒めるとは考えにくい。
健康対策としては、年間104日以上の休日取得、在社時間などの上限規制、終業から始業までの間に一定の休息時間を設けることを条件として挙げている。
働き手の健康を守るために欠かせぬものばかりだが、このうちのいずれかを導入企業に選択させるというのである。これでは実効性は疑わしい。
まず労働時間の厳格な上限を設定し、併せて抜け道をふさぐ補完的な規制を整備するのが筋だ。過労防止の保証抜きでは、仕事と生活の両立どころか、仕事と生命の両立さえ危ぶまれる。
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