「アベノミクスの成長戦略で年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国民の年金資金を使って株式投資を増やし、日銀は金融緩和の一環で株価指数連動型の上場投資信託(ETF)を買い入れ、いわゆる「官製相場」で株価を支えている。」
「実体経済のカギを握る消費を好転させるには働く人の所得増と非正規労働の縮小が欠かせない。経営者寄りのアベノミクスは真逆なのである。」
バブルと株価の操作は、金融機関、投資家が多くの国民を巻き込んで繰り返し引き起こすあくどい行為です。株価が経済動向との関係で伸びるにはそれなりの合理的な理由が存在しなければなりません。官制相場、金融資本による相場高騰である限りは必ず急激な相場下落と、売り浴びせが発生することは確実です。
日本経済、先進工業国の経済構造は深刻な行き詰まりに直面しており、その構造転換、新たな産業の創造ができない限り、株式相場だけが高騰することはあり逢えません。
<東京新聞社説>株価2万円 危うい緩和マネー相場
東京市場の株価が十五年ぶりに一時二万円台に達したのは、世界的な金融緩和でだぶついた投資資金が流れ込んだおかげである。実体経済の好転を伴わないバブル的な「金融相場」は反動が怖い。
株価は下がるよりは上がった方が良い。株取引をする人だけでなく、広く国民経済的に利益になる。株価が上昇すれば、保有する人の資産が増えて個人消費の拡大につながるし、株式で運用する企業年金などの成績も好転する。企業の体力面も強くしよう。
だからといって、上昇すれば何でもいいというものでもない。マネーゲームのようなバブル相場や、半ば強引に人為的な引き上げともいえる官製相場は「正しい株価上昇」とはいえまい。いずれ痛いしっぺ返しがあり得る。
今回の株高が危ういのは、東証一部の売買状況で海外投資家の大幅買い越しが示すように、世界的な余剰資金が主役であることだ。一昨年、日銀が異次元緩和を始めたのに乗じて、海外投資家は株高を演出し、売り抜けて大もうけしたが、その再現を予想させる。
世界の金融市場では、日銀に加えて欧州中央銀行(ECB)も先月、量的緩和に踏み切り、中国やインドなども金融を緩和した。米国は昨年十月に量的緩和を終了したが、金融引き締めとなる利上げ時期はまだ探っている段階だ。
今は緩和マネーがだぶついているとはいえ、早ければ六月ともいわれる米国の利上げをめぐり、臆測だけで世界のマネーは大移動する。そういう危うい状況の上に成り立つ一時的な二万円だから手放しで喜ぶわけにはいかないのだ。
加えてアベノミクスの成長戦略で年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国民の年金資金を使って株式投資を増やし、日銀は金融緩和の一環で株価指数連動型の上場投資信託(ETF)を買い入れ、いわゆる「官製相場」で株価を支えている。
株価とは本来、企業の業績や実体経済の姿を映し出すものである。企業業績への期待は高まっているが、このところの円安傾向と、原油安というボーナスに負うところが大きい。消費や投資など実体経済は依然として厳しいままだ。
それはアベノミクスが機能していない証左でもある。
実体経済のカギを握る消費を好転させるには働く人の所得増と非正規労働の縮小が欠かせない。経営者寄りのアベノミクスは真逆なのである。
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