民意を無視した原子力産業、安倍、自民党政権、経済産業省の暴走を許してはならないと思います。
<信濃毎日社説>電源構成「原発ありき」を改めよ
原発ありきの発想から離れられないのか。
経済産業省の有識者委員会がきのう、2030年の電源構成について議論を始めた。経産省側は、原発の比率を「15~20%」とする案を軸に検討する構えでいる。
福島第1原発の事故前の28・6%より下がるものの、確実に20%とするには原発の新増設か建て替えが必要になる。「原発依存度を可能な限り低減させる」とした安倍政権の基本方針と矛盾し、容認できる目標値ではない。
原発や火力発電、自然エネルギーなどの電源をそれぞれどの程度使うか、割合を示したものが電源構成だ。エネルギー政策の柱となるが、安倍政権は昨年春に決めたエネルギー基本計画で、具体的な数値の提示を見送っていた。
にもかかわらず、経産省は総合資源エネルギー調査会で原発支援の議論を先行させた。電力市場の自由化後も原発の運用コストを消費者に転嫁する案、廃炉費用の不足を電気料金で回収できる仕組みを取りまとめている。
一方、大手電力が相次いで太陽光電力の買い取りを中断したのを受け、固定価格買い取り制度の見直しに着手。大手電力が太陽光設備を持つ事業者や家庭に対し、補償金なしで発電抑制を要請できるようにし、自然エネルギー普及の機運を後退させている。
電源構成を固めた上で、目標に向かって具体策を練る手順が逆になり、原発に偏ったエネルギー政策が固められつつある。
そもそも、運転期間を原則40年に制限する制度を適用すれば、現在48基ある原発は30年までに20基ほどに減る。「40年」の厳格な適用は、公明党が先の総選挙で公約している。与党間の議論さえ不十分なのに「15~20%」が独り歩きするのはおかしい。
民主党政権時の12年、意見聴取会や討論型世論調査を経て「30年代に原発ゼロ」の目標が打ち立てられた。最近の世論調査でも国民の大半が脱原発を望んでいる。政権が代わったとはいえ、この国民の意思表示はまだ生きていると見なければならない。
経産省は電源構成の議論開始に合わせ、意見募集を始めた。今後、各地でシンポジウムも開くという。有識者委員会のメンバーが参加し、直接国民の声を聴く機会も設けるべきだ。
今度決まる電源構成は、次世代の暮らしに影響する。判断材料となる資料を分かりやすい内容で公開し、公正で透明な委員会審議とするよう強く求める。
<北海道新聞社説>東電再不起訴 国民の疑問に答えたか
刑事責任を問うべきではないかとの検察審査会の疑問に、真摯(しんし)に答えたと言えるか。被災者のみならず、多くの国民にも腑(ふ)に落ちない結論だろう。
東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故で東京地検は、業務上過失致死傷容疑で告訴・告発された勝俣恒久元会長ら東電の元幹部3人を再び不起訴(嫌疑不十分)とした。
事故は予見できなかったとの理由だ。昨年7月、市民11人による検審が「起訴相当」と議決したのを受けて再捜査した結果である。
だが、納得がいかない。空前の原発事故の真相を解明するためにも捜査資料を裁判という公開の場でつまびらかにし、司法判断を仰ぐべきではないか。
今回の不起訴を受けて検審は再審査する。その結果、8人以上の賛成で起訴議決をすると、裁判所が指定する検察官役の弁護士が強制起訴する。
福島の事故は放射性物質を広範囲にまき散らし、環境を汚染した。今なお、多くの住民に避難生活を強いている。市民感覚を大事にした検審の結論を待ちたい。
地検は一昨年9月、不起訴処分を決め、これを不服として被災者らによる「福島原発告訴団」が検審に申し立てた。
地検に再捜査を求めた前回の議決は常識的な内容だった。
震災の9年前、福島県沖を含む海域で大地震の可能性が予測された。その後、巨大津波対策の必要性が東電社内で認識されながら上層部の判断で先送りされた―。
「人災」という判断だ。
なのに地検は今回も「原発の主要機器が浸水する危険性を認識すべき状況にはなかった」とした。
確かに、刑事責任を問う以上、要件は厳格でなければならない。
だが、原発で大事故が起きれば被害は深刻だ。電力会社の経営陣には高度の注意義務が求められ、一般的な事故の過失責任と同列には論じられない。
東電の無策と不作為を考える上で見逃せない事実がある。
巨大津波は宮城県の東北電力女川原発をも襲ったが、深刻な事故は免れた。計画段階から津波対策を重要課題として敷地を想定津波の5倍の高さの位置に設定していたからだ。
原発を設置する以上、持ってしかるべき問題意識と言えよう。
これでも東電に落ち度はないと言い切れるのだろうか。
検審は検察の判断が適切だったのかを厳しく問うてほしい。
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