アメリカ政府機関による各国首脳、市民への盗聴、傍受はアメリカだけでなくどこでもやっていること。当たり前のこと。やられていることを前提として、対策を立てるべきとの主張もありますが、アメリカ政府、アメリカ軍などの政治的退廃、モラルの欠如は救いがたいものであり、歴史にその汚点を記すことは確実です。政治で一番重要なことは政治、政府が自国民、他国から信頼され、信用されることではないかと思います。その重要な信頼、信用が欠落した政権、政治指導部が何を意図してもまともには相手にされないことは日本のみならず、世界各国共通のことと思います。基本的人権の尊重、正義、対等平等、公平、相互信頼、互恵平等などが外交、国連などの基本的なルールとして認知される社会で、アメリカ政府、軍がこのような違法行為、政治的退廃に犯されている様は際立っていると同時に、アメリカ型政治経済運営の行き詰まりを象徴しているようにも思います。
アメリカ国民が黒人であるオバマ氏を政治指導者として選択したのは歴史的評価に耐えることとしても、そのことがアメリカ政府、アメリカ軍、アメリカの超富裕層、多国籍企業などが新自由主義的考え方、軍事力を使った他国の威圧、自らの利益のために平気で、自国民の貧困化、他国を巻き込み、軍事、外交、貿易で混乱させる身勝手さは全くその本質を反省、改めようとしたわけでないことはあきらかです。したがって、オバマ大統領が黒人であることを除いたら歴代アメリカ大統領とほぼ同じような政策提起を継続させ行っていることは当然かもしれません。アメリカ大統領の絶大な権限が、アメリカ型政治経済構造をたった一人で変更するくらい、脆弱なものでないことも証明しているのだと思います。
政治的な腐敗堕落を改善できない政治、経済は必ず、その国家の衰退に行き着きます。また、自国民の政治不信を増大させ、政治的な不安定状況を作り出し、他国からの信頼、信認がなくなることは当たり前であり、その代償を確実に払わされることだけは自覚すべきです。
<社説>
ドイツのメルケル首相が「信頼を裏切る行為」と怒ったのは当然だ。首相から抗議の電話を受けたオバマ米大統領はこう答えたという。「(あなたの)通話は傍受していないし、今後も傍受しません」。ええ以前はやってましたよという響きがある、苦しい弁明である。
米国による一連の盗聴疑惑に続いて米情報機関がメルケル首相の携帯電話を盗聴していた疑いが浮上した。24、25の両日開かれた欧州連合(EU)首脳会議でも問題になったが、EUは結局、盟友の米国に厳しい態度は打ち出さなかった。だが、「もうしない」という米大統領の言葉をうのみにして対策を怠れば、今度は別の国、たとえばロシアや中国による盗聴に直面しかねない。インターネットによる情報集約化が進む一方、他国のコンピューターに侵入して安全保障を含めた情報を混乱させるサイバー攻撃の手口も高度化しているからだ。
それに情報収集をめぐる米欧の対立は初めてではない。2001年、欧州議会は米国主導の国際組織「エシュロン」が電話やファクスなどを傍受し、人権やプライバシーを侵害したとの報告書をまとめている。情報収集をめぐる暗闘は今後も世界規模で激しくなる一方だろう。
それが現実である。メルケル首相が言うように、友人(同盟国)同士でスパイ行為はしないという善意の了解も大切だが、疑心暗鬼を招かぬよう約束違反を検証する仕組みも必要ではないか。軍縮・軍備管理と同様に、情報収集でも「検証」の必要性が増した。と同時に、特に同盟国以外からの盗聴やサイバー攻撃を無力化しないと、国民の利益を守れない時代である。
米中央情報局(CIA)の元職員で米国のお尋ね者になっているスノーデン容疑者が暴露した情報収集活動は、まさに氷山の一角だ。米国が世界の指導者35人の通話を盗聴していたとの報道もあり、波紋はなお広がる気配だ。同容疑者は、機密資料を流すウィキリークスのアサンジ容疑者同様、(行為のよしあしはともかく)米国の機密の壁に挑戦しているつもりだろう。
「獅子身中の虫」を抱え込んだオバマ政権は近年、外交的な得点が少なく、国内では意外にも「スパイ防止法」の適用事例が目立つ。こうした姿勢が政権の精彩を失わせていることは否めず、親米諸国にも離反の動きが出ている。頼みの欧州で不信感が高まり米国の影響力がさらに低下すれば、世界の「学級崩壊」が進みかねまい。そんな懸念を杞憂(きゆう)とすべく、オバマ大統領の奮起に期待したい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます