「対中国の緊張関係にとらわれ、世界の動きが見えていなかったのではないか。米国とともに行動すれば大丈夫という時代ではなくなったことを理解すべきである。」
時代の変化を正確に受け止められない政権の弱点です。アメリカの政治経済が世界を支配する時代は終了しつつあります。アメリカ自身は、現在も経済的、軍事的に世界で最大の強国である点は変わっていません。しかし、第二次世界大戦後の国際秩序は、国連中心に動きてきたことは事実であり、イラク戦争を通じてのアメリカの政治的孤立化は、軍事費の財政負担の巨額化も併せて、アメリカ一国による外交、軍事的な支配構造を終了させようとしています。そのことを感じながら、感情的に受け入れることができないアメリカの政治経済の支配層があがく姿が、今回のアジア投資銀行を巡る話し合いでよく出ています。
アメリカ、イギリス、フランス、日本などの先進工業国が世界経済を支配する構図は、必ず終了します。食料、原油などの確保、工業的な発展、環境保護などそれぞれの課題を、バランス良く、達成させる。進展させるために、多くの国家が発展に寄与できる構造づくりは誰であっても歓迎すべき課題です。
<東京新聞社説>アジア投資銀行 国際金融秩序の転換か
中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)は日米を除き、先進国から新興国まで広範な参加となる。米国内では外交上の判断ミスとの声が上がり、日本もアジアでの存在感低下の懸念がある。
基軸通貨「ドル」と世界銀行、国際通貨基金(IMF)を中心として米国が主導してきた戦後の国際金融秩序は歴史的転換点を迎えるかもしれない。米国偏重で「アジアで孤立化」した日本が、アジアのリーダー的な地位を中国に奪われつつあることは明らかである。
AIIBは二〇一三年に習近平国家主席が今後アジアで増える道路や鉄道などのインフラ整備に資金供給する目的で提唱。資本金五百億ドルでスタートし、その後一千億ドルまで増資する可能性がある。
日米両国は、出資の過半を中国が担って主導する運営では融資審査が甘く、環境破壊なども懸念されるとけん制、三月末までの創設国入りは見送ると表明してきた。
しかし、米国は自国が支配する既存体制を維持したい、日本は日米主導で築いたアジア開発銀行(ADB)による権益を侵されたくないというのが本音だろう。
中国がAIIB創設に動いたのは、IMF改革で中国の出資比率増加が二十カ国・地域(G20)で五年前に合意したのに米連邦議会の反対でいまだに実現していないことへの反発からである。新興国の参加が相次いだのも米国支配体制への不信が高まっているからとみられている。
日米のけん制にもかかわらず、英国やドイツ、フランス、イタリアの主要国や韓国、オーストラリア、さらには中国と領海争いを続けるフィリピン、ベトナムなども参加を表明した。それが国益にかなうとの判断からである。
急成長するアジアでのインフラ資金需要は年八千億ドルといわれるが、ADBの年間融資額は百億ドル台から増やしても二百億ドル台にとどまろう。とてもADBだけでは賄えないのが現実である。
好むと好まざるとに関係なくAIIBは発足する。中国主導の運営体制に対し、外部からいくら注文を付けても実効性は望めないだろう。懸念があるのなら、参加して他の国々と連携しながら改善の道を探るべきである。世銀やADBとの協調は欠かせない。
対中国の緊張関係にとらわれ、世界の動きが見えていなかったのではないか。米国とともに行動すれば大丈夫という時代ではなくなったことを理解すべきである。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます