「日本のケースは、韓国にも教訓となるところが少なくない。政府が税金をつぎ込んだり、政界が独立機関である中央銀行に圧力をかけて資金を供給したりしても対症療法にすぎず、産業構造を変えて効率と競争力を高めなければ結局はどんな薬も効果はない。この20年間の日本の失敗は、全ての韓国国民が痛みに耐える覚悟を持って構造調整に臨まねばならないということを教えてくれる。」
マイナス金利で国債の価格が高騰しているが、逆に価格が下落する潜在的な可能性が高まっている。国債価格が下落(金利は上昇)、暴落したときには国債は紙切れになります。
資金を融資して、利ザヤが稼げない。金融機関としての基本的な機能が否定されています。預金を受け入れて、資金が金融機関にたまれば、たまるほど、資金を使って投資を行い、資金運用しなければなりません。その分リスクも高まり、博打のような資金運用を国と日銀が金融機関に対して強要しているようなものです。
資本主義の権化である金融機関の動向は、さながら、新自由主義政治経済の末路を象徴しているようにも感じます。
<朝鮮日報>コラム:日本国債暴落危機が韓国に与える教訓
金融専門家の多くが、アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の「急所」として日本の国債価格が暴落する可能性を挙げている。日本の国の債務が持ち堪えられない水準に達し、債務不履行に陥りかねないという理由からだ。日本の国の借金はすでに対国内総生産(GDP)比230%、1050兆円と世界最悪だ。
こうした警告は以前からあったが、ヘッジファンドが国債売りに動くたびに日本の民間銀行などが国債を買い入れ、暴落の懸念は杞憂と判明したりした。しかし8日、その懸念が杞憂に終わらないかもしれないというシグナルがもたらされた。日本の銀行最大手である三菱東京UFJ銀行が、国債入札に特別な条件で参加できる特別参加者(プライマリー・ディーラー)の資格を返上する方向で検討していることが報じられたのだ。資格を保有していると一定割合以上の応札を義務付けられる。メガバンクの「国債離れ」がほかの金融機関などに広がる可能性もあるという。
日本の民間銀行は、なぜ国債購入の隊列から離脱しようとしているのだろうか。今年2月、日銀がマイナス金利政策を導入したことで民間銀行の収益性は大幅に低下した。この先、国債を抱える余力はなくなる。加えて、来年4月に予定されていた消費税率引き上げが再び2年半延期され、増税によって財政赤字を減らしていくという日本政府の約束が守られない公算も強まった。日本政府の借金(国債)償還能力に対する不安は高まらざるを得ない。
不安感は株式市場の動きにも現れている。外国人投資家が日本の株式市場から資金を一斉に引き揚げているのだ。9日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、外国人投資家は1-5月に日本株を420億ドル(約4兆5000億円)売り越した。売り越し額は同期間としてはここ13年間で最大になったという。同紙は、外国人が日本の市場から手を引く最大の理由は、アベノミクスに対する失望だと分析した。
アベノミクスの危機には、この20年における政策失敗の歴史がそのまま反映されている。バブル崩壊直後の1990年代、日本では「デフレが深刻なのに政府は何をやっているのか」と政界などからの圧力が強まり、政府は100兆円という巨額の財政出動を行った。にもかかわらず、98年には日本の経済成長率は戦後最悪のマイナス2%まで下落した。
財政政策で効果が出ないとなるや、非難の矛先は日銀に向かった。「政府がこれほどがんばったのに日銀は何をやっているのか」と政界から批判が相次ぎ、ついに日銀は2001年、民間銀行の保有国債を買い入れる形で市場にどんどん資金を供給し始めた。アベノミクスも、ただその延長線上にあるだけだ。政府と中央銀行が乗り出して必死にあれこれしたものの、結局残ったのは日本国債という「時限爆弾」だ。
日本のケースは、韓国にも教訓となるところが少なくない。政府が税金をつぎ込んだり、政界が独立機関である中央銀行に圧力をかけて資金を供給したりしても対症療法にすぎず、産業構造を変えて効率と競争力を高めなければ結局はどんな薬も効果はない。この20年間の日本の失敗は、全ての韓国国民が痛みに耐える覚悟を持って構造調整に臨まねばならないということを教えてくれる。
崔元碩(チェ・ウォンソク)国際部次長 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版