「現行憲法を変えたいというのならば、何が不足でどの条項をどう変えるのか、明示するのが先だ。」「議論が熟さぬまま改憲を既定路線化しようというのでは、順番が違う。」
「そもそも憲法は、主権者である国民が権力を縛るために制定するものだ(このことを立憲主義と言う)。だからこそ最終的な判断は国民投票に委ねられている。」「この前提を忘れ、政党の思惑ばかりが先行するようでは本末転倒だ。各党は常に国民の意思を踏まえた判断を心がけてほしい。」
まず、安倍自民党政権は現在の政治において憲法を順守しているのかが問われなければなりません。都合がよいか、悪いかではなく、現在存在する憲法を国会、行政府、司法が順守することが大前提です。その最大の課題で、自民党、公明党は明らかに憲法違反行為を繰り返しているわけであり、彼らの政権運営に正当性があろうはずがありません。安倍などの主張は憲法を無視しており、現行憲法への賛否とは全く次元の違った評価でも、容認できるはずがありません。
第二に、権力を縛る憲法を一内閣の勝手な解釈で自由自在に変更すれば、立憲主義が成り立つはずはありません。そして、憲法など存在する意味すら否定されます。このような民主主義、立憲主義のイロハも理解せずに、暴走する安倍、自公政権を退陣させることが最優先です。そのことが最大の参議院選挙争点です。ですから、多少の野党共闘の政策上の違いは、そもそも問題にしても意味がありません。それよりも議会制民主主義、三権分立、立憲主義の回復と確認ができるかどうかが選挙の最大争点です。
<北海道新聞社説>2016年参議院選 改憲論議 既定路線化は筋が違う
憲法改定が参院選の主要争点に浮上した。
安倍晋三首相はネット番組の党首討論で「時代の変化に合わせて変えるべきものは変えていく」と述べ、選挙後の議論加速を表明した。ただ「どの条文とは決まっていない。この選挙においては議論できない」と具体論は先送りした。
現行憲法を変えたいというのならば、何が不足でどの条項をどう変えるのか、明示するのが先だ。
北海道新聞社の全道世論調査では、首相が目指す改憲に反対との回答が計60%に達した。議論が熟さぬまま改憲を既定路線化しようというのでは、順番が違う。
首相を批判する野党の主張にも一部あいまいさが残る。各党は選挙戦で立場を明確にしてほしい。
首相は今年1月、改憲を「参院選でしっかり訴えていく」と述べたが遊説では多くを語らず、党公約でも最低限の記述にとどめた。 安全保障関連法や特定秘密保護法と同様、選挙では争点化を避け、勝利の後に数で押し切ろうという狙いならば、容認できない。
公明党の山口那津男代表は討論で、現行憲法に新たな要素を加える「加憲」を主張。連立与党とは違う枠組みで議論するというが、公約では明記を避けた。選挙戦で立場をはっきり示してほしい。
民進党の岡田克也代表は「憲法議論はやぶさかでないが立憲主義を理解した首相でないと危ない」と現政権下での改憲に反対した。だが将来の改定には含みを残している。改憲が現実の課題となった時、党内対立が再燃することはないのか。指導力が問われよう。
共産、社民の両党は現行憲法を維持する護憲の立場だ。自衛隊については共産が「違憲」、社民は「違憲状態」とみなしてきた。当面は存在を容認するが、将来どう位置づけるのか、課題は重い。
「改憲勢力」とされるおおさか維新の会と日本のこころ、より慎重な生活の党、新党改革にも、さらに具体的な説明を求めたい。
与党は既に衆院で改憲発議に必要な3分の2を占めている。今回の選挙で維新、こころを含め78議席を確保すれば発議可能となり、日本の針路が左右されかねない。
そもそも憲法は、主権者である国民が権力を縛るために制定するものだ。だからこそ最終的な判断は国民投票に委ねられている。
この前提を忘れ、政党の思惑ばかりが先行するようでは本末転倒だ。各党は常に国民の意思を踏まえた判断を心がけてほしい。