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藤沢周平の「三屋清左衛門残日録」(文春文庫)読了。本の汚れ具合からするとたぶん今回で4、5回目の読み直し。奥付けに97年第12刷とあるから、ならすと数年おきに読んでいることになる。読み始めると、ストーリー展開や主人公たちの行動を少しづつ思い出す。
せがれに家督を相続し、藩の要職を引退した男の日記、という体裁で話が進む。藩内抗争を軸にした15話の短編連作で綴られる清左衛門の心情、老境の諦観、かつての友情と別れ。ムダのない自然描写、人との交わりの機微。やがて見出す人生の意味…。いいなあ。
-そうか、平八。
いよいよ歩く練習を始めたか、と清左衛門は思った。
人間はそうあるべきなのだろう。衰えて死がおとずれるそのときは、おのれをそれまで生かしめたすべてのものに感謝をささげて生を終わればよい。
でもそれまでは力を尽くして生き抜くことを、病身の旧友の姿に教わった。今日の日記には平八のことを書こう、と心弾む清左衛門の姿で終わる。藤沢周平作品で一番好きなのは、やはり「用心棒日月抄」シリーズだけれど、武家物の長編もおとらず心にしみる。で、今度は上下巻の「風の果て」を読み始めた。
外ではまだ北風が吹き荒れている。
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