サイババが帰って来るよ

Count down to the Golden age

暗示で治る病もあるのだ

2015-12-21 00:00:22 | 日記

ポニョ:さて、いよいよ世潮を取り巻く人々のお話も今日で最終回です。二回で終わるはずがあんたが喋りやから結構長くなってしまったぜよ。

ヨシオ:あのな、ポニョが焚き付けたからやないか。

ポニョ:前回の話で、もうちょっとで後家にさせてしまうとこやったなって、させてしまってるやないか。人間が死ぬ時って面白いよな。自分がもうすぐ死ぬって分からないんやろか?

ヨシオ:分からんやろ。でも意識が戻ったり、失ったりするって人は肉体じゃなくて、その中にいる霊だという証拠になるよな。だって意識を失った途端に身体はただの物体になるんやから。親父は生真面目なお袋の事をいつも茶化してオバハン何て呼んでわざと怒らせていたんや。特にお袋が結構、生真面目な、真剣な顔をしている時にわざと怒らせて、雰囲気を変えるんや。だから親父が最後に意識を取り戻した時に、親父はお袋が大粒の涙を流しながら自分を見ているのを気付いたんや。だからそういう真剣な雰囲気が大の苦手な親父は、実は東洋子をもう少しで後家にするつもりやったという代わりに、オバハンをもう少しで後家にするつもりやったと言ったんや。それを聞いてお袋はいつものジョークと分かったけれど、とても笑える雰囲気では無かったと言ってたな。

ポニョ:それって当たり前だのクラッカーやないか。最愛の夫が死にかけているのに笑えるか?

ヨシオ:俺は、親父の気持ちは良く分かるんや。どんな時にでもいつも心に余裕を持って生きたいな。でないとこの世に縛られて、心に余裕が無くなると、神さんの事なんて死ぬ間際に思う事なんて無理やろ。

ポニョ:そうなんやろか?というわけでお話に入って行きますね。今日は残された家族のお話です。

東洋子は集中治療室に運ばれる前に息を引き取った龍海の遺体を黙って見ていた。遺体の周りには英子を始め、兄を慕う兄弟たちが周りを気にせず大声で泣いていた。東洋子はどういうわけか、龍海が亡くなってから、なぜか一滴の涙も出なくなっていた。ただ、呆然として立ちすくんでいた。やがて霊柩車の乗せられた遺体は天満の家の二階に運ばれた。そしてそこで人々は葬式までの間龍海と最後の別れをした。東洋子と二人の子供は龍海と一緒に住んでいた洋服屋の二階にいて、そこから一歩も外に出なかった。時折お腹を減らして泣くまだ四ヶ月になったばかりの豊美に乳をやり、世潮にもパンなどを食べさせていたが、自分は何も喉を通らなかった。

林氏が心配して、大きく泣きはらした目をしながら食べ物を持ってやって来た。そして、家に篭っていてはいけない。一緒に外に出ようと言ったけれど、東洋子はどこにも行きたくはなかった。そうしているうちに三日が経ち葬式の準備が出来た。東洋子は最後に一目だけ龍海の顔を見ようと一人で亡骸を安置してある部屋に入ろうとしたら、英子が走って来て止め、もうあんたが知っている兄ちゃんの顔じゃないから見たらあかん。と言われた。でもその手を振り切って部屋に入っていくと、遺体の周りはドライアイスだらけでどこが顔か分からなかった。

三日間何も食べていなかったので、東洋子は別人のように痩せ細っていた。葬式で棺桶の横に座っている痩せこけた東洋子とまだ幼い子供達を見て、涙を流さない人はいなかった。龍海は享年二十九歳で、東洋子は二週間前に二十二歳になったばかりだった。世潮は三歳半で豊美は四ヶ月だった。
やがて葬式が終わると、たくさんの車を並べて、神戸の長田にある中華墓地に移動した。もうすでに大きな墓穴が掘られていて滑車で棺桶をゆっくり下ろした。東洋子がお花を投げ入れた後、世潮も投げ入れた。その時世潮は墓穴の周りに泣きながら立っている人々に向かってこう尋ねた。「お父さんはどこに行ったの?どうしてこんな深い穴の中にお父さんを入れるの?」
それを聞いて声をあげて泣くのを我慢していた弟達も、大声を出して泣き始めた。

次女の和子が思わず世潮に走り寄って抱きしめながら泣き声でこう言った。「もうお父さんは天国に行ってしまったんだよ。さよならを言いなさい。」と。
世潮は天国とか、お墓とか、お経とか、全く理解出来なかった。それで機会あるごとに人々にお父さんはどこに行ったのと聞いて歩いた。叔父達は東洋子に、姉ちゃんもう世潮を黙らせてやと泣き腫らした目をして頼んでいた。東洋子は世潮もだんだん無口になっていくのに気が付いた。そして食事の量も以前より遥かに減って来ていた。東洋子は四十九日を迎えた日に、自分がしっかりしなければ子供達はどうなるんだ。いつまで経ってもめそめそしていたら、子供たちにも良くない。龍海は絶対にこういう状況を喜んでいない。私はもっと強く生きなければいけない。龍海の置き土産である子供のためにも。と思い、久々に綺麗に化粧をして子供二人を連れて近所の写真館に向かった。そうだ。今日この日が私の二回目の人生のスタート地点だけではなく、子供達も片親というハンディーを持って力強く生きていくための出発点なのだ。それを記念するために今日この日、家族三人で写真を撮ろうと思ったのだ。

坊さんが毎日のようにお経をあげに禅寺からやって来た。世潮も坊さんの後ろに座ってお経を聞かなければいけなかった。世潮はだんだんお経を聞くのが好きになって来た。というのもお経を聞いていると龍海の声が聞こえるような気がしたからだ。
その声は「お母さんの言うことをよく聞いて、お手伝いもするんだよ。」と言っているように聞こえた。でも世潮はいつも愛してくれた龍海がこの世にいなくなった事を受け入れられなかった。誰にお父さんの行方を聞いても天国に行った年か言ってくれないし、自分の事をあれだけ愛してくれていたお父さんが自分をほっておいてどこかに行くなんて、世潮には考えられなかった。ある日世潮は腹痛になり病院へ行くと腸重積だと診断された。直ぐに手術の用意がされた。このまま放っておくと腸が腐ったり、腸が詰まって炎症を起こす危険があるのだ。叔父や叔母、そして信仁や林氏も手術室を見下ろせる部屋にやって来た。そして幼い孫のお腹の上にメスが下されようとした寸前に、信仁は大きな声で医者に叫んだ。「この子のお腹を切ってはいけない!」と。
そして「この子が死んでも良い。だからこの子のお腹を切らないでくれ!」ともう一度叫んだ。

医者は驚いて上を見上げた。信仁は「この子の死んだ父親が迎えに来てるんだ。一緒に連れて行きたいと言っている。だから手術なんて可哀想なことをしないで欲しい。そんな事をするより、安らかに父親の元に行かしてやって欲しい。」と言った。
医者は執刀を中断し、それではもう一度バリウムを入れて様子を見ましょうと言った。世潮の口から大量のバリウムが入れられX線動画でそれがゆっくりと胃から腸に移動しているのが見えた。そして問題の腸がくびれて腸が腸の中にめり込んでいるところにバリウムが差し掛かると、そこで動きが無くなり、どんどん後からやって来るバリウムがダムに溜まった水のように溜まり始めた。それを見ていた家族はみんなため息をついた。しかし次の瞬間奇跡が起きたのだ。大量のバリウムがめり込んでいる腸を押し出して正常な位置に戻したのだった。この予想も出来ない動きに医者を始め、家族全員が歓声をあげながら手を取り合って喜んだ。龍海は世潮をまだ一緒に連れて行く気持ちは無かったのだった。翌日、世潮は無事退院した。まだ龍海が死んで三ヶ月しか経っていなかった。
東洋子と豊美

世潮の龍海を慕う気持ちは増す事があっても減りはしなかった。龍海といつも行っていた銭湯にも、一人で行かなければいけなかった。もうあのバイクに誰も乗せてくれなかった。バイクで遠出した時に寄った、あの美味しいラーメン屋台にも行く事は無かった。世潮はだんだん食べ物を食べれなくなって行った。食べても直ぐに吐き出してしまうのだ。病院で自家中毒症と診断されて、直ぐに入院する事になった。世潮は毎日点滴注射で体力を保っていた。ある日、医者が東洋子にこう言った。「この病気は精神的なストレスから来ています。少し荒っぽいですが、ショック療法をしてみませんか?盲腸は異常ありませんが、世潮に盲腸の摘出手術をして、切り取った盲腸を見せ、この毒物が君の病気の原因だったんだ。これを取り除いたから君は元気になるよ。なんでも食べれるよ。と言うのです。そうすれば治るかもしれません。」そして、医者が言う通り世潮は手術の後、見違えるように元気になり、食事も普通に出来るようになったのだった。
世潮が元気になると共に、東洋子の苦しかったカルマも支払われてしまったようでした。若い後家さんと二人の幼子達は、一つ屋根に住んでいた祖父母や叔父貴達や叔母によって大切に扱われて、愛をたくさんもらいながら毎日楽しく育って行きました。やがて、世潮が霊的な道を歩みだすと、現代の世に人の身体を取ってインドにおられる神の化身サイババによって直接導かれて、神様と共に人生を歩むという夢のような経験をする事が出来たのでした。東洋子は人生の最後の十年間は認知症になってカルマを支払わなければならなかったのですが、世潮や嫁、孫達によって、世界で一番幸せな認知症の患者となりました。それらの物語はすでに下に貼っておいたように、このブログで連載しましたので、また機会があれば読んで下さいね。それでは、長い間お付き合い下さりありがとうございました。次回から三回に渡ってクリスマスに因んでイエスキリストのお話をしますからお楽しみにして下さいね。
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