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「日本の国益を直接左右する南シナ海情勢」

2013-10-22 07:56:06 | 日本

北村淳さんが、「日本の国益を直接左右する南シナ海情勢」に関する論文を発表した。極めて重要であるので、以下、要約し記す。


日本では、南シナ海での南沙諸島や西沙諸島をめぐる中国による覇権主義的領域拡張行動が、尖閣諸島そして東シナ海での「明日は我が身」的な状況として取り沙汰されている。しかしながら、南シナ海での出来事は決して対岸の火事ではない。

中国共産党が主張するように南シナ海が「中国の海」となってしまうことはもちろん、南シナ海での領有権紛争が激化してトラブルが頻発する海域になってしまうことは、いずれも日本の国益を直接的に損なうことになる。その点を我々は強く認識しなければならない。なぜならば、日本に石油・天然ガスをもたらす莫大な数の各種タンカーが航行しているシーレーンの85%程度は南シナ海を通過しているからである。もし南シナ海が名実ともに「中国の海」となってしまった場合、日中間で極めて深刻な対立が生じた際には、中国が日本に対して「南シナ海での日本向け船舶の航行の安全が保証されないであろう」旨の通告を突き付ける事態が想定される。それにより、シンガポール沖から南シナ海を北上しバシー海峡を抜けて日本に向かう莫大な数のタンカーは、マカッサル海峡を抜けてフィリピン海を北上し、日本に向かう迂回航路を航行しなければならなくなる。その結果、輸送費が跳ね上がるだけでも、日本経済が被る影響は計り知れない。さらには、日本向けタンカーは危険であるとの“風評”も生じて、保険料や船賃自体が高騰し、日本にエネルギー危機をもたらすことになるであろう。

南シナ海が完全に中国の手に帰さなくとも、南シナ海の数多くの岩礁をめぐって覇権主義中国が海軍力や空軍力を投入して軍事紛争が頻発するようになるだけで、上記の状況に準じて日本向けタンカーや船舶はフィリピン海の迂回航路を航行せざるを得ない状況に直面し、日本経済そしてエネルギー供給は深刻な危機に直面してしまう。

上記のような状況に立ち至らないために、かつては日本もフィリピン同様にアメリカ軍事力を頼り、アメリカの威力によって中国に対して睨みを利かせてもらうことを期待していればよかった。しかしながら、2期目のオバマ政権下で、急転直下「アメリカ頼み」は極めて危険であることが表面化し、アメリカ軍関係者たち自身もそのような危惧を述べ始めている。まさに、「アメリカ頼み」には見切りをつけるべきターニングポイントに日本は立たされている。

それでは、南シナ海での日本の国益すなわち南シナ海を縦貫して日本に石油と天然ガスをもたらす“日本の生命線”としてのシーレーンの自由航行を確保するには、どうすればよいのか?

もちろん「アメリカ頼み」から脱却しなければならないとはいっても、日米同盟は実質的に強化していかねばならないことは言うまでもない。ただし、自主防衛能力を飛躍的に強化して「足らざる部分を同盟により補う」という対等な立場の軍事同盟に日米同盟を変質させていかなければならない。

日本が自らの生命線とも言えるシーレーンの安全を確保するために、日本自身がアメリカ海軍と協力しつつフィリピンに軍事的支援を提供することは、まさに南シナ海における日本の自主防衛努力の第一歩と考えられる。

もちろん、現状では海上自衛隊シーレーン防衛艦隊を編成してスービック軍港を拠点に南シナ海をパトロールすることは戦力的にも、経済的にも、国内法的にも不可能である。そこでとりあえずは海自艦艇や哨戒機などをフィリピンに派遣して、フィリピン海軍や空軍それにアメリカ海軍との共同訓練や、フィリピン将兵に対しての実地教育訓練などを実施し、恒常的にスービック軍港はじめフィリピン周辺海域に自衛隊のプレゼンスを維持させるのである。

日本が、積極的に自主防衛のための軍事を展開したとなると、日本やフィリピンの“親分”として振る舞い続けていたいアメリカは、無理をしてでもフィリピンに対する軍事力の展開を強化し、南シナ海での対中封じ込めで“お山の大将”たらんとするのは必至である。その結果、日本にとっての自衛隊展開の目標である南シナ海シーレンの自由航行の確保は、日本自身の努力と、日本によって引きずり込まれるであろうアメリカ軍事力によって維持されることとなる。







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