龍の声

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「砕氷船の力学」

2020-07-23 10:46:25 | 日本

砕氷は当研究室が(山口助教授が)氷海工学のうちはじめにテーマとした分野である。 海氷を割って進む砕氷船にとって重要なことはまず船首形状であり、それによって氷の割り易さあるいは氷中抵抗が異なってくる。 さらに船首部分で割れて後方に流される氷が船体と干渉したり抵抗になったりしないように、船底や船側の形状も重要になる。 また、氷海を航行するといっても普通の海水の中を進む場合も多いので、通常船舶としてあまりに効率の悪い船体にすることもできない。

その上、後方に流れてきた氷がプロペラに噛むかもしれないという、一般の海では考えられないようなシビアな状況も考えねばならない。 氷がプロペラに噛むと、アイストルクと呼ぶ大きなトルクが軸系に働き、場合によってはプロペラのブレードを損壊することもある。 それを防止するには、なるべくプロペラ周りに氷が流れてこないようにするか、何らかの方法でプロペラを保護しなければならない。

以上のように、砕氷船の建造を計画するには、通常の船舶以上に考えることが多い。 そのような船舶を設計するには、船体による氷の割れ方のメカニズムを詳細に知ることが必要であり、そのために材料力学的な計算などによって氷中性能の定量化や最適船型の開発が試みられている。 また、海氷の浮かんだ海水は複雑な挙動を示すので、水面に氷を張ることのできる水槽(氷海水槽)における模型船を使った実験や、実際の砕氷船で氷海に乗り入れる実船実験も多く行われる。 北極海航路開発プロジェクト(INSROP)の中でも、実船の性能評価や、形状の異なる船首模型を使った氷海水槽実験など、この分野について様々な研究がなされた。

海上保安庁の砕氷巡視船「そうや」を使って、オホーツク海で行なわれた、薄い氷の船首部砕氷パターンの実船観測では、 船首から割れが前方に伝わった後、円周状の割れが発生している。 船が速くなると、円周状割れの間隔が狭くなっているのが、良く分かる。 この様なことは、これまでの砕氷理論に考慮されていない。 現在、流体力,氷の慣性力、氷板中の割れの伝播などの、動的な影響を考慮した計算プログラムを開発中である。











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