「環太平洋連合の創出」
富は海洋にあり!
今後のわが国の進むべき道は、シーパワー(海洋国家)諸国と連携し「環太平洋連合」の創出にある。
ソ連が崩壊した後、最大のランドパワーとしてのし上がりつつあるのが中国である。清や中華人民共和国などの華北政権は歴史的に典型的なランドパワーである。着々と領土を広げていく膨脹主義はランドパワー本来の性格であるが、華北政権の場合はさらに中華思想により、周辺の「野蛮国」を服属させ「文明化」することが中華帝国の使命である、という文明観を持つ。
こういう極端なランドパワーの膨脹主義をどう防ぐかが、日本のシーパワーとしての最大の課題である。そのために日本、台湾、フィリピンやシンガポールなどの海洋アセアン諸国、オーストラリア・ニュージーランドからなるシーパワー連合を提案する。これらの国々はユーラシア大陸のリムランドを構成し、中国の膨脹を防ぐ障壁となる。
これにアメリカを加えると「環太平洋連合」が実現する。これらのシーパワー諸国に守られた太平洋はその名の通りの「平和の海」となって、諸国の交易と交流を通じた繁栄がもたらされる。わが国にとっても、中東からの石油輸入シーレーンを防衛するという安全保障上の課題が達成される。
中国の膨脹に脅かされている石油輸入のシーレーンにしろ、シベリア石油パイプラインにしろ、安定的なエネルギー確保に不安があるのが、近代日本の安全保障上の大きな問題であった。この問題は大東亜戦争において、連合国側の対日石油禁輸から開戦に踏み切らざるを得なかった時から少しも変わらない。
しかし、シーパワーとして生きる戦略を固めれば、この問題を根本的に解決しうる望みが生まれる。それは我が国が世界第6位、451万平方キロに及ぶ200海里排他的経済水域(EEZ)を持っていることである。この広大な海洋を開発することで、我が国は一挙に資源・エネルギー大国となりうる。
海はエネルギーの宝庫でもある。波力発電、潮汐発電、海上風力発電などは自然に優しいエネルギー源である。また海底に眠るメタンハイドレートは天然ガスに替わるクリーンなエネルギーであり、日本周辺の埋蔵量は、日本の天然ガス消費量の約100年分に相当すると言われている。これらを開拓すれば、エネルギーの自立も夢ではない。海底にはマンガンやコバルトなど、近代工業に不可欠の戦略物資も豊富に存在している。
また食料面でも、我が国の魚類養殖は世界で最も事業化が進んでいるが、その技術をさらに発展させて人工的に孵化した稚魚を海に放流して,自然界の生産力によって成育させる「海洋牧場」が実現すれば、食料の自給率を大幅に上げることができ、今後の食糧危機にも相当の対応ができるようになる。
さらに海上に巨大な鋼鉄製ブロックをつなげて浮かべる「メガフロート」により、海上空港や、海上都市の実現も実用レベルに近づいている。これにより、国土の狭さも問題にならなくなる。
世界第六位の広大な経済水域に、我が国の先進的な科学技術を適用すれば、資源・エネルギー・食料の豊富なシーパワー大国としての未来が開けていくだろう。海こそが我らのフロンティアである。(江田島公明談)