【心の働き】
◎「心」の働き ⇒「火」
・火の行に属するものは、火が燃え盛る様に動的なエネルギーの解放された拡がりきった性質がある。木は順調に上へ伸びるだけではなく停滞したり、枯れてしまう事もあるが、火は上へ向かって燃え盛るのみである。木の性質によって伸びていき、行き着いた先に火の性質があるわけである。
方角では南、季節では夏、一日のうちでは昼という様に天(陽)の気、つまり太陽の作用が最大な時である。五行の内では最も気が強いものである。
・心は「君主の官」
神に通じる最高の指導者とされ、聡明さ、英知はここから発現する。
・心は神を主る、神は神を蔵す
精神の中枢で、すべての生命活動は神により統率されている。意識水準を保つ、覚醒や睡眠のリズムを調整する。
・心は血脈を主る
血を循環させ脈の働きを司る。
・心は舌に開竅し、その華は面にあり、汗を主る
心に病変が有れば舌色は紅く、又は、淡白になり、もつれて言語不能に陥る、心気の不足は味覚の異常となる。舌は心の他に、脾胃との関係も深い。心と血脈の働きが衰弱すると血脈の流れが悪くなり、顏色が蒼白となり光沢が無くなる、心気が不足すると薄黒いか青紫になる。
◎心の気の異常
・心悸、動悸、結滞、息切れ、呼吸困難、
◎循環器能障害(心臓ポンプの働きの低下による)
・手足冷え、四肢厥逆、血圧の低下、意識混濁、胸内苦悶感、心不全
◎心の熱症状
・心に熱がこもると、心煩、心中煩躁、心中懊濃、胸部熱感
◎心によい食べ物
・胡麻、ナス、ごぼう、みつば、レンコン、うなぎ、酒、ビール、ウイスキー、お茶、コーヒー、紅茶、わさび、トウガラシ、落花生、玉ねぎ、天ぷら、油揚げ
【脾の働き】
◎「脾」の働き ⇒「土」
・土の行に属するものは、土の中にものを埋めた時に、それが種であった場合は芽が出たり、動物の死骸であれば腐食するという様な変化をさせる性質がある。
方角では中央、季節では土用と言う様に、土は全ての中間点であったり、物事を変化させたりする。五行では木と金、火と水の性質が相反するが、どちらにも属さないのが土である。季節の土用というのは暦上のすべての季節、立春、立夏、立秋、立冬の前18日間をいう。つまり各季節のラスト18日間は土用がくるので、夏だけではなく年に4回もあるわけである。そして、いきなり冬から春になるのではなく、この土用の18日間で次の季節へと変わるわけである。
・脾は「倉廩の官」・脾は運化を主る
倉は穀物を蓄えるものが倉で、米の倉が廩。倉廩とは飮食物の倉庫を意味する。胃は水穀<飲食物>を受納し脾は精微を運化し、これにより人体に必要な各種の栄養分を供給する。飲食物を運化し精微物質<精という栄養物質>を抽出して全身に運搬すると同時に、体内の津液をも運搬する。食物を消化吸収し水穀の気を生成する。脾の機能が衰えると食物の精気が全身にゆき渡らず、腹部膨満、腹鳴、下痢、消化不良、食欲不振などが起こる。血色不良、津液が停滞し、浮腫が生り、下痢や小便不利などが起こる
・脾は統血する
血流を滑らかにし血管からの漏出を防ぐ。脾の弱りは慢性の血便、慢性の月経過多、子宮出血などが起こる。
・脾は肌肉・四肢を主る
筋肉の形成と維持にあずかる。飲食物を全身に輸送し、この精気により肌肉は生成される。脾の異常は全身に精気が回らず、肌肉の栄養が欠乏し全身が痩せ、四肢に力がなくなる。
・脾は口に開竅する
脾の異常があると、口唇は青白くなり、ツヤを失う。
◎脾の気の異常
・噫気、噎、ガス腹、腹虚満、腸蠕動亢進、乾嘔
◎脾の水の異常
・よだれ、薄い唾液、胃内停水、呑酸、軟便、下痢、水様便、泄利下重
◎脾の気と水の異常
・嘔吐、腹鳴
◎消化機能低下
・食欲不振、胃腸虚弱、消化不良、食後倦怠感、胸焼け、胃のもたれ、心下痞、食滞、悪心、便秘、下痢
◎脾によい食べ物
・米、麦、砂糖、ビスケット、小麦粉、ジャム、カステラ、パン、飴、栗、しるこ、生菓子
【肺の働き】
◎「肺」の働き ⇒「金」
・木、火の様に枝葉を広げて高揚していく一方だと動的なエネルギーが膨大しすぎてしまう。それを防ぐため刃物で植物の枝葉を切り落とすような作用が必要となる。金の行に属するものは、物事を小さくする、縮める、下げるという性質を持つ。上(陽)に向いていたものを下(陰)に向ける。つまり陽極まれば陰となるという自然の法則により、下げる、弱めるのが金の気である。
方角は西、季節は秋、一日のうちでは夕方という様に、金は終わりとか、静的な方向に行く様を表す。晩秋と言う言葉は金のイメージとして解りやすい。
・肺は「相傅の官」
君主である「心」を補佐する宰相の役を果たし、体の血液の循環を調整し、気血を調整して、五蔵をよく強調させる。血液の異常では肺に対する治療も大事なことがある。
・肺は気を主る
呼吸により宗気<天空の気>を吸入し、天の気を生成して全身に運ぶ。この天の気の一部は飮食の精気と合して真気(元気)ともいうなり、生命の維持作用となる。
・肺は宣発・粛降を主り、水道を痛調する
水穀の気の一部から血と水を生成する。
・肺は皮毛を主り、鼻に開竅する
皮膚の機能を制御し、その防衛力を保持する。肺で吸入された天の気<陽気>は、全身にめぐらされ、全身を包むように分布し、保護する。この陽気は喜温や体温の変化に従い調節作用を行う。例えば、寒いときは縮んで膚(皮膚)を緻密にさせ、発汗を止めるし、暑いときは、伸びて肌を弛緩させ、発汗させる。このバランスが乱れると肌は外邪にもろくなり、いつも風邪ばかり引くとなるのである。
◎肺気の異常
・咳、咳逆上気、胸満、胸中痞、喘、喘鳴、息切れ、喘咳
◎肺の水の異常
・咳嗽、薄い喀痰、水涕、胸中満悶、胸水、胸痛
◎肺によい食べ物
・卵、大豆、小豆、黒豆、牛乳、牛肉、豚肉、鶏肉、バター、チーズ、チョコレート、鯛、かつお節、かまぼこ、醤油、餅、シュウマイ