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still life

2013-03-12 20:35:23 | 小説

黒曜石の話で


あんなに盛り上がったのは、後にも先にもあれが最後だろう。



太古の時代、狩りをするときに使われたヤジリ
それに使われたのが黒曜石で、長野の南信は河岸段丘になっており、川べりにあたるような場所の田畑を掘り起こせば結構出てくる。

例えるなら、コールタールの欠片のようなもので、槍や弓の先として細かく削ったのがヤジリだ。

その辺りは、土器の破片もよく落ちているが、弥生時代のものか縄文時代なのかは不明だ。




白髪でモノトーンのファッションで身を包むような出で立ちから、ある種の品を感じた。
彼の職業がどんなに大層であったとしても、その時の僕らにとっては野暮な話だし、純粋に海洋学のプロから見た歴史と地球、子供の頃リアルに見た歴史と現物。


バーボンの濃度に比例してマニアックな内容となっていった。



地球上の殆どの海を彼は廻ったと言っていた。



僕は、せいぜいカリブの海と大西洋くらいだし、ハワイだタヒチだと言ったところで彼の仕事にかなうわけがない。


「ウナギがマリアナ海溝から来ることだけは最近わかったみたいだね。」
唐突に彼が切り出した。


「ウナギのメカニズムも解明されていないのに、鰻屋を営むのはギャンブルじゃないですか?」
僕は前々から疑問に思っていたことを口にした。

「そんなこと言ったら、農家も漁師も一緒だろうに。」

「確かにそうですよね。大間のマグロの漁師なんて生活保護受けてまで漁に出ていますからね。」

「宝探しに近いかもしれないね。」


「なぁ、世界で一番綺麗な海ってどこか知っているかい?」


「さぁ?どこでしょう?慶良間とかモルディブとかニューカレドニアとかですか?」


「まぁ、それらも間違いなく綺麗だよ。でも、もっと綺麗なところがあるんだよ。」


「え?どこですか?」


「それは、自分で探してごらん。君ならきっといつか自分の目で見ることになるから。」



アリューシャン海域で吹き荒れる風がうねりを巻き起こし、波と波が波動となり
大きなインターバルがより大きなパワーを作り出す。

それらは、冬のハワイのノースショアだったり、日本だったら仙台、カリフォルニアにもうねりをもたらす。


大きなパワーが大陸棚に衝突し、一気にブレイクする。



それはそれは冷たい海流だ。



「地球の70%が水であることは有名だけれど、人間の体も7割が水分だって知っていたかい?」


「はい。水の結晶の実験の話で知りました。」


「ははは。実験なんてどうにでもなるんだよ。」


「え?」


「まぁそれはおいといて、月が消滅するって話はしってるかい?」


「初めて聞きました。」


「人の生まれる時、潮は満ち、人が死ぬ時、潮が引く。」


「身体のバイオリズムが月に依存するとも言うね。さてどうなるんだろうね。」


「いつなくなるんですか?」


「150年以内にとは言われているね。」



宇宙が誕生してから数億年後に生まれた星。

原子と原子が物凄い速さで衝突し、弾け、新しい原子が生まれる。



気が遠くなるほどの繰り返しが地球を生み、水を作り、生命を誕生させた。




「まだ時間あるかな?」


「はい?」


「ちょっと付き合ってくれないか?」
そう言うと、彼は僕の分も会計を済ませ迎えを呼んだ。



いつかに続く







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