
今日は、デビッドボウイーの1974年作の“ダイアモンドの犬”というアルバムについてです。
グラム・ロックというジャンルも以前より勢いを落とし、明らかにその終幕が迫って来ていると感じていたのか、その集大成として、イギリス人作家ジョージ・オーウェルの小説1984年を下敷きにしたコンセプト・アルバムの制作を意図していました。残念ながら、故ジョージ・オーウェルの親族からその許可を得られず、半身犬の姿になった自身が近未来の映像を語るというコンセプトに変更され制作されたのがこのアルバムです。
どんなトラブルがあったのかは判らなのですが、このアルバムにはプロデューサーのケン・スコットだけでなく、ボウイーの片腕であったバック・バンド、スパイダース・フロム・マーズのリーダーであるミック・ロンソンも参加していないのです。
ケン・スコットといえば、ジョージ・マーチンの下でビートルズ後期のレコーディングのエンジニアを担当した人で、ビートルズ時代の貴重な経験をもとに計算された音作りをおこなう正統派のプロデューサーであり、一方ミック・ロンソン は、リード・ギタリストとして2作目から前作までのボウイーのアルバム制作に多大な貢献していました。
実際ボウイーを良く知る彼らの参加なしに区切りをつけるようなアルバムを制作するのは、大変ではないかと思ったのですが。
そのため制作において、それまでと異なった革新的手法が必要と考えたのでしょうか、自作自演でセルフ・プロデュースと思い切ったスタイルを取りました。ただし、リズム・セクションは、曲の芯になるため自身では担当せずセッション・ミュージシャンを起用し、幾らかの例外を除き他の楽器はできる限り自身で演奏しました。
確信犯的な試みかどうかは判らないのですが、演奏のヘタウマ感(セッション・ミュージシャンの技量と比べてという意味で)をわざと出すことによって今までと違った音が出せるのではないと考えたのでは? また制作の相棒として録音エンジニアにキース・ハーウッド(この人はスーンズのイッツ・オンリー・ロックンロールのエンジニアを担当)を選び、ケン・スコットのプロデュースとは異なるアイデアの音を狙ったのでは? タイトル曲の“ダイアモンドの犬”や“レベル・レベル”をなど聴けば、ストーンズのようなシンプルでストレートなロックンロールの影響を受けているのが良く分かります。
プログレのような曲の間にシンプルなロックを入れメリハリをつけ、そのわかりやすさが特にアメリカで受け、全米5位にアルバムがランク・インされる程の大ヒットとなりました。
だだ、彼自身も迷っていたのかどうか判りませんが、この後に行われたダイアモンドの犬ツアーで,1966年アメリカのR&Bチャートで1位を獲得した黒人ソウルシンガーのエディー・フロイドのノック・オン・ウッドを取り上げることにより、その時点で今後の音楽の方向性を変えたような気はします。それが引き金となり、ラバー・ソウルならぬ、プラスティック・ソウルと呼ばれるヤング・アメリカンを次回に制作されるのです。
ボウイーの歌詞は難解で示唆に富んだ内容なので、その道の専門家たちがああだこうだと歌詞の内容を掘り下げて小難しいことを言っています。もちろん詩の内容を知らないよりは知っておいた方がいいわけですが、それほど難しく考えないでアメリカ人のようにロックのサウンドにシンプルに反応し楽しむことでいいのではないでしょうか?
このアルバムの“ロックンロール・ウィズ・ミー”というレット・イット・ビーのピアノのイントロのようなコードで始まる曲で、彼は“一緒にロックしてくれれば、自分自身は楽しいが、そうでなければ悲しい”というようなことを歌っています。
David Bowie - Rebel Rebel
David Bowie - Rock N' Roll With Me
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