70年代の頃は、レコードの全盛時代であった。
高性能のカセット・デッキなども発売され始めたが、日本の場合その用途はレコードからカセット・テープへのダビングもしくはFM放送の番組のエア・チェックが主なもので、オリジナルのカセット・テープ版を購入してテープ・デッキで聴く人は少なかったのではないかと…
というわけで、当時未知のアーチストの音源を聴くには、ラジオ以外では知人の間でのレコードの貸し借りとなる。
レコード店がレコードを購入した時にくれる厚手の紙袋を抱えて学校に持って行った記憶がかすかに残っている。
CDの場合は、よほど変な扱い方をしない限り音源の記録面にダメージを与えることはないし、最悪薄傷がついても再生に影響のない場合が多い。
しかしレコードとなると、レコード・プレーヤーのセッティング、レコード針の状態、レコード針を盤面に落とす手法の違いなどで盤面にダメージを与える可能性が高い。それゆえ、友人の好意で借りたレコードも傷がつかないよう恐る恐る通しで2-3回聴く程度となる。
一度、”これは素晴らしいアルバムで、是非聴いてくれ”とイエスの危機というレコードを貸して貰ったのだが、傷がつくのを恐れて2回通しで聴いて返却してしまったので、複雑な構成を持った長尺の楽曲の良さを解することは出来なかった。

イエスの危機、当時、全3曲のみ収録というポップ路線から外れた構成は、イエスを全く知らなかった人にとっては、何となく難解なイメージもあった。当時、彼らのレコードを聴く前のイメージは、英語での肯定を示すイエスではなく、イエス・キリストが個人的には浮かんだ。また通常のポップ・アルバムであれば収録曲の1曲がハズレであっても、残りの10数曲に望みを卓すことが出来るが、この場合は3曲のうち1曲がハズレであれば、残すは2曲のみ。最悪その2曲も好みにマッチせねば全滅という憂き目に遭ってしまう。
また、気に入った箇所のみを何度も繰り返して聴くなどは御法度であった。何回もトーン・アームの操作を行うとこれまた盤面に傷をつける可能性が高くなる。LPの場合は、レコードの頭の音源が記録されていない頭の箇所に、できるだけショックを与えないように針を降ろし、最後まで通して聴くのが安全である。
またこちらから貸すときも、恐々であった。相手がどのような再生機器を持っているか判らなかったからである。
当時、マニアでない一般家庭でカラー・テレビも買ったし次はステレオでも買おうかとなる場合、プレーヤー、アンプそしてスピーカーが一体となった家具調足付きのものを購入したであろう。
そのため、ステレオ・サウンドが楽しめれば問題はないとことで、特にレコード針の管理には無頓着で購入した当時のものがそのまま使用されている場合も多い。
ステレオ・セットで聴くならまだしも、相手の環境がポータブルの電畜で寿命が短い摩耗したサファイヤ針での場合はかなり不安になったのでは… そのため、本当に信頼の置ける人だけに貸したうような記憶も…
そんな中、貸して貰ったレコードで、自身が所有していたレコードのごとく良く聴いたのが、キャロル・キングのタペストリー(つづれおり)。
少し鼻にかかった個性的な歌い方で、人によっては好き嫌いがあるかもしれないが…
このレコードは、1971年に出され、チャート全米15週連続一位獲得、アメリカだけで1100万の売り上げ、グラミー賞4冠達成、さらにシングル・カットされたI FEEL THE SEARTH MOVE、SO FAR AWAY、IT’S TOO LATEとSMACKWATER JACKはそれぞれ大ヒットとなる超名盤であった。

ジャケ裏に歌詞がびっしり書かれていた。後にCDの紙ジャケも同様に再現されたが、小さすぎて判読できない。
当時キャロル・キングの存在を知らず、レコードを借りたことがきっかけで、数年遅れでファンとなった。このことから、他の女性シンガーソングラーターにも目が向くようになった。
名曲YOU’VE GOT A FRIEND(君の友達)はシングル・カットされなかったが、ジェームス・テイラーがカバーし大ヒットさせた。

ワーナー移籍2作目に収録
この曲は多くのシンガーにカバーされたのだが、ジェームス・テイラーは別格として、知っている範囲で上出来なのは、個人的にはやっぱりダニー・ハサウェイのライブでのカバーだろう。

ダニーのライブ盤、マービン・ゲイやジョン・レノンもカバーしている。その他の曲も出来が良い。
YOU JUST CALLから始まるコーラス・パートのところをライブに来ていた観客に歌わせるのだが、ダニー・ハサウェイとあまり距離感を感じさせない小規模のライブ・ハウスのアット・ホームなコンサートの雰囲気に、あたかもそこに存在しているかのように、スピーカーの前で聴いている私もつい歌いだす。
ちなみに、借りたレコードでイエスの危機の良さを解ることの出来なかった私は、そのリベンジを果たすべく後日大枚をはたいて、イエス・ソングスを購入。

3枚組のイエス・ソングスは、プログレロックの金字塔と言える。
このライブ盤の出来にぶっ飛び、イエスの信者となる。しかしながらライブ盤のあまりの迫力に、旧作のスタジオ盤では物足りなく、それらの購入は後回しとなった。
当時のレコードの価格は、現在の国内盤CDの価格と同じくらいで、当時と現在の物価を比較するとかなり高価なものだったと言える。また洋楽の情報も雑誌やラジオが主体でなかなかピン・ポイントの情報は得られなかった。
そのため、レコードを傷付けるリスクがあるものの、レコードの貸し借りは情報を入手ための重要な手段だと言える。
インターネットやCDレンタルで簡単に音源が入手出来る昨今、非常に便利になったとは言えるが、いつでもその手の情報を入手出来る気軽さからか、その昔私が体験してきた一期一会の緊張感を味わうことは出来ないだろう…
と不便さの中で得られた充実感を懐かしむ博士であった。
まあ、他の人から見れば、そう大したことでもないのであるが…
Donny Hathaway - You've Got a Friend
高性能のカセット・デッキなども発売され始めたが、日本の場合その用途はレコードからカセット・テープへのダビングもしくはFM放送の番組のエア・チェックが主なもので、オリジナルのカセット・テープ版を購入してテープ・デッキで聴く人は少なかったのではないかと…
というわけで、当時未知のアーチストの音源を聴くには、ラジオ以外では知人の間でのレコードの貸し借りとなる。
レコード店がレコードを購入した時にくれる厚手の紙袋を抱えて学校に持って行った記憶がかすかに残っている。
CDの場合は、よほど変な扱い方をしない限り音源の記録面にダメージを与えることはないし、最悪薄傷がついても再生に影響のない場合が多い。
しかしレコードとなると、レコード・プレーヤーのセッティング、レコード針の状態、レコード針を盤面に落とす手法の違いなどで盤面にダメージを与える可能性が高い。それゆえ、友人の好意で借りたレコードも傷がつかないよう恐る恐る通しで2-3回聴く程度となる。
一度、”これは素晴らしいアルバムで、是非聴いてくれ”とイエスの危機というレコードを貸して貰ったのだが、傷がつくのを恐れて2回通しで聴いて返却してしまったので、複雑な構成を持った長尺の楽曲の良さを解することは出来なかった。

イエスの危機、当時、全3曲のみ収録というポップ路線から外れた構成は、イエスを全く知らなかった人にとっては、何となく難解なイメージもあった。当時、彼らのレコードを聴く前のイメージは、英語での肯定を示すイエスではなく、イエス・キリストが個人的には浮かんだ。また通常のポップ・アルバムであれば収録曲の1曲がハズレであっても、残りの10数曲に望みを卓すことが出来るが、この場合は3曲のうち1曲がハズレであれば、残すは2曲のみ。最悪その2曲も好みにマッチせねば全滅という憂き目に遭ってしまう。
また、気に入った箇所のみを何度も繰り返して聴くなどは御法度であった。何回もトーン・アームの操作を行うとこれまた盤面に傷をつける可能性が高くなる。LPの場合は、レコードの頭の音源が記録されていない頭の箇所に、できるだけショックを与えないように針を降ろし、最後まで通して聴くのが安全である。
またこちらから貸すときも、恐々であった。相手がどのような再生機器を持っているか判らなかったからである。
当時、マニアでない一般家庭でカラー・テレビも買ったし次はステレオでも買おうかとなる場合、プレーヤー、アンプそしてスピーカーが一体となった家具調足付きのものを購入したであろう。
そのため、ステレオ・サウンドが楽しめれば問題はないとことで、特にレコード針の管理には無頓着で購入した当時のものがそのまま使用されている場合も多い。
ステレオ・セットで聴くならまだしも、相手の環境がポータブルの電畜で寿命が短い摩耗したサファイヤ針での場合はかなり不安になったのでは… そのため、本当に信頼の置ける人だけに貸したうような記憶も…
そんな中、貸して貰ったレコードで、自身が所有していたレコードのごとく良く聴いたのが、キャロル・キングのタペストリー(つづれおり)。
少し鼻にかかった個性的な歌い方で、人によっては好き嫌いがあるかもしれないが…
このレコードは、1971年に出され、チャート全米15週連続一位獲得、アメリカだけで1100万の売り上げ、グラミー賞4冠達成、さらにシングル・カットされたI FEEL THE SEARTH MOVE、SO FAR AWAY、IT’S TOO LATEとSMACKWATER JACKはそれぞれ大ヒットとなる超名盤であった。

ジャケ裏に歌詞がびっしり書かれていた。後にCDの紙ジャケも同様に再現されたが、小さすぎて判読できない。
当時キャロル・キングの存在を知らず、レコードを借りたことがきっかけで、数年遅れでファンとなった。このことから、他の女性シンガーソングラーターにも目が向くようになった。
名曲YOU’VE GOT A FRIEND(君の友達)はシングル・カットされなかったが、ジェームス・テイラーがカバーし大ヒットさせた。

ワーナー移籍2作目に収録
この曲は多くのシンガーにカバーされたのだが、ジェームス・テイラーは別格として、知っている範囲で上出来なのは、個人的にはやっぱりダニー・ハサウェイのライブでのカバーだろう。

ダニーのライブ盤、マービン・ゲイやジョン・レノンもカバーしている。その他の曲も出来が良い。
YOU JUST CALLから始まるコーラス・パートのところをライブに来ていた観客に歌わせるのだが、ダニー・ハサウェイとあまり距離感を感じさせない小規模のライブ・ハウスのアット・ホームなコンサートの雰囲気に、あたかもそこに存在しているかのように、スピーカーの前で聴いている私もつい歌いだす。
ちなみに、借りたレコードでイエスの危機の良さを解ることの出来なかった私は、そのリベンジを果たすべく後日大枚をはたいて、イエス・ソングスを購入。

3枚組のイエス・ソングスは、プログレロックの金字塔と言える。
このライブ盤の出来にぶっ飛び、イエスの信者となる。しかしながらライブ盤のあまりの迫力に、旧作のスタジオ盤では物足りなく、それらの購入は後回しとなった。
当時のレコードの価格は、現在の国内盤CDの価格と同じくらいで、当時と現在の物価を比較するとかなり高価なものだったと言える。また洋楽の情報も雑誌やラジオが主体でなかなかピン・ポイントの情報は得られなかった。
そのため、レコードを傷付けるリスクがあるものの、レコードの貸し借りは情報を入手ための重要な手段だと言える。
インターネットやCDレンタルで簡単に音源が入手出来る昨今、非常に便利になったとは言えるが、いつでもその手の情報を入手出来る気軽さからか、その昔私が体験してきた一期一会の緊張感を味わうことは出来ないだろう…
と不便さの中で得られた充実感を懐かしむ博士であった。
まあ、他の人から見れば、そう大したことでもないのであるが…
Donny Hathaway - You've Got a Friend