(ダウ・ジョーンズ)強制歳出削減が実施されたからといって、しょせん大した影響はない、という声もあち
こちで聞かれたが、実際のところはどうなのだろう。
今年春に発動した歳出の自動削減措置は、その数カ月前の減税終了と一連の増税から打撃を受けていた米国民
の家計を一段と悪化させるはずだった。
それどころか、小売売上高は今年の春に実質ベースでリセッション(景気後退)前の水準を上回り、今なお増
加している。米商務省が13日発表する7月の小売売上高は、歳出の強制削減が施行されてから5回目の統計となる
が、インフレ調整後の数値は4カ月連続で増加すると予想されている。ダウ・ジョーンズ経済通信がまとめたエ
コノミスト調査では、7月の前月比伸び率は0.3%と、前月の0.4%をやや下回ると予想されている。
恐ろしい予測と良好な結果の違いはどこから生じたのだろうか。手短に言えば、より大きな力が働いているこ
とにある。住宅価格の回復がもたらす資産効果についてはさんざん語られてきた。住宅バブルの崩壊がキャッシ
ュフローにもたらす影響は今や悪循環から好循環に転じつつあるのかもしれない。小売売上高が危機前のピーク
水準に達するまでこれほど長い時間がかかった大きな理由の1つは、これらが住宅ブーム時に人為的につり上げ
られていたことにある。消費者らは危機前の数年間、自宅をあたかも現金製造機のように利用していたのだ。
消費者らは当時、自宅の資産価値を担保に可処分所得の約7%程度もの借り入れを膨らませたが、現時点では
これを所得の約3%相当分減らしている。この10%の変動は他方面の支出が減少していることを意味するが、こ
の過程で消費者の資産価値は上昇しつつある。
この影響を部分的に相殺しているのは、米連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和措置と超低金利政策だ。
可処分所得に対する債務返済額の比率は直近で10.3%と、統計開始以降で最も低い水準となった。わずか6年ほ
ど前には、この比率は過去最高の14%に達していた。
債務返済の加速や住宅ローンの返済状況は依然として不安材料だが、住宅市場からの悪影響は緩和しつつある
かもしれない。多くの住宅保有者は過去最低の住宅ローン金利で返済を続けている。すでにデフォルト(債務不
履行)を宣言し、再出発した人々もいる。住宅価格が再び上昇しているため、住宅市場は将来的な支出拡大の基
礎を作りつつあるといえる。
たとえ住宅価値の上昇に伴う支出が過去のブーム時ほど盛り上がらなくても、支出が減少し続けることはない
だろう。
消費者が米政府に関する報道を素通りし、ショッピングモールへ急いでいることは日を追うごとに明白になっ
ているといえよう。
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